忍たま乱太郎

□その協力は誰の為
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「はぁ、何で私がこんなことを……」



楽しんでいるのか協力してくれているのか、綾部の表情からは読み取れないが、これが最後ならと付き合う決心をし、目的の五年生が来るのを待つ。

どうやらその人物は、決まってこの時間にここに来ては戦輪(せんりん)の腕前を自慢する人物らしい。

ちなみに戦輪とは、投擲武器の一種であり、 外側に刃の付いた金属製の投げ輪となっている。
これを指に引っかけ飛ばすのだが、切れ味は抜群だ。

そんなことを考えていると、紫の装束が見え、あれが綾部が言っていた五年生に違いないと思い声をかけようとしたとき、逆に音根は声をかけられてしまっていた。



「私の練習場所にいるなんて、もしかしてキミは私の戦輪を見に来たのかい?」

「え?あ」

「何も言わなくてもいい、私には全てわかっているからな!ならば、私の戦輪の腕前を思う存分見せてあげようではないか」

「いや、あの」



こうして音根は、この忍たまの戦輪の技、そして自慢話を嫌というほど聞かされ、すでに空は暗くなり始めていた。



「おっと、もうこんな時刻か。また私の戦輪技を見たくなったらいつでも来るといい」



そう言いはその忍たまが去っていった時には、音根は疲れきりげんなりしていた。

そして、気づけばこんな時刻。
想い人どころか色の実習の相手を見つけることすら今からでは難しい。



「これというのも全てはあなたの〜!!って、いないし」



隠れていたはずの茂みには、すでに綾部の姿はなく、その後、音根に色の実習の相手が見つかることはないまま、不合格となったのはいうまでもない。


それから翌日、綾部が何時ものように穴を掘っていると、上から声が聞こえ綾部は穴から地上に出る。

するとそこには、昨日音根と会わせた五年生達の姿がある。



「綾部くん、昨日はあんな感じでよかったの?」

「私の戦輪を最後まで見てくれていたぞ。まぁ、当然だがな!」

「戦輪の話はどうでもいいです。でもまぁ、無事彼女は不合格になったみたいなので」



想いを寄せていたのはどうやら綾部の方だったようだ。

穴を掘っていたら偶然見かけた想い人。
一人百面相をしている音根をこっそり見て笑みを浮かべる。

ひょっこり穴から出て気づかないふりをしていれば、知らないくのたまに声をかけられ話を知った。

そして考えたのは、絶対に音根の初めてを誰にも取られない方法だ。

そのために、頼みたくもない五年生、とくに戦輪が得意である平 滝夜叉丸(たいらの たきやしゃまる)にまで頼み協力してもらった。



「まぁ、あの後も心配で夜まで見張ってたんだけど」

「それは駄目だろ……」



嬉しそうに笑みを浮かべる綾部は穴の中に戻ると、再び穴堀を始めた。

その少しあとに、桃色の装束を来た想い人が来ることも知らずに。



その協力は誰の為
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