忍たま乱太郎

□捕まらないあなた 前編
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「話はわかったけど、さっきの女性が三郎だとして、何であんなことになってたの?」

「いや、それがさあ」



兵助に変装をするのはいいものの、男と女では話をするのはほんの少しの時間だ。

それなら、女装をすればいいんじゃないかという話になった。

女同士なら、音根と会話をする時間も増えるだろうと三郎は考えたらしく、先に三郎が女に変装をして見せた。

その女装だが、あの時三郎がなった人物は音根の姿だったらしく、頬を染めて戸惑う勘右衛門が面白くて抱き締めたところを、どうやら運悪く音根に見られたようだ。

だが、あの時の音根は冷静さなどなかったために、まさか女の姿が自分であったことにも気づかず走り去ってしまったのだ。

これで、兵助に鼓動を高鳴らせていた理由がわかり、勘右衛門は他に女もいなければ、自分のことを嫌いにもなっていなかったのだと知り、一気に体から力が抜けホッとしてしまう。

頭を下げ謝る三人に、もういいよと声をかける。



「勿論、三人して私を騙してたことは今でも怒ってる。でも、話を聞いたらなんか安心しちゃった」



柔らかな笑みを浮かべる音根を勘右衛門は抱き締め、もうこんなこと絶対にしないからと言う。

恋仲になって初めて抱き締められた暖かな温もりに、音根はそっと抱き締め返す。

そんな二人の姿に、兵助と三郎も暖かな視線を送り笑みを浮かべた。

だが、一つ気になることがあった音根は、勘右衛門に尋ねてみることにした。



「勘右衛門が町中で女の人と歩いてるのを見たってくの一の子から聞いたんたけど、それも三郎?」

「それってもしかして昨日のことかな?それなら、その時いたのは兵助だよ」

「え?兵助?」

「ッ、勘右衛門、余計なこというな!!」



兵助が二人の口を塞いだため聞けなかったのだが、そのあとこっそり勘右衛門から聞いた話によると、女装が上手くできない兵助は補習を受けたらしく、その補習に勘右衛門も付き合ったそうだ。

兵助は、見た目は六年の立花 仙蔵(たちばな せんぞう)先輩に負けないくらいかっこよく、女装も似合いそうなのだが、どうやら化粧が上手くいかないらしく補習になったようだ。

その一日前は勘右衛門も補習を受けていたらしく、その時は兵助が付き合ったらしい。

なんだか二人の女装姿が見てみたくなってしまった音根はそれから二人に頼み込み、今度は三人のおいかけっこが始まった。

きっと兵助が知られたくなかったのは、こうなるとわかっていたからだったのだろう。



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