忍たま乱太郎

□いつものオチ
5ページ/5ページ



「音根ちゃん」

「何ですか、タカ丸先輩?」

「こっちのジュース飲んでみる?さっき買ってみた新商品なんだけど美味しいよ」



そう言い差し出したのは、今までタカ丸が飲んでいたグラスだ。

音根は気にすることなく、いただきますと受け取ろうとしたその時、横から伸ばされた手がグラスをタカ丸から奪い取り、ごくごくと飲み干してしまう。



「酷いよ守一郎くん!」

「俺はタカ丸先輩の思惑を阻止しただけです」



そんな二人の会話を見ながら音根が思っていたのは、守一郎もあのジュースが飲みたかったのかなという何とも呑気な考えだった。

そのあとも、誰かが何かを仕掛けては別の誰かが邪魔をしの繰り返しで、すでに当初の目的など皆忘れているようだ。



「何故皆私の邪魔をするんだ!!」

「それは私の台詞だ!!」

「そもそも皆が皆の邪魔してるよねぇ」

「というか、さっきから音根が静かな気がするんだけど」



守一郎の言葉で、確かにと思った四人が音根に視線を向けてみると、いつの間にか音根の隣にいる喜八郎に音根が寄りかかり寝息をたてていた。

その光景に、皆が何かを言おうとするが、喜八郎は自分の口に人差し指を当てる。



「静かにしないと音根が起きちゃいますよ」



当初の目的である本人が眠ってはどうすることもできず、皆が肩を落とす中、喜八郎だけは嬉しそうだ。

だが、このままでは風邪を引くといけないため、喜八郎は音根をソファに寝かすと、毛布を掛ける。



「結局今回もこういうオチというわけか」

「いいんじゃない、僕たちらしくて」

「タカ丸さん、それは余裕のあらわれですか?」



静かな男だけでのお泊まり会、それは、去年と同じだった。

あのときも、音根が眠ってしまったため、そのあとは男だけで静かに会話をして終わった。



「音根ちゃん、何時も夜の9時には寝るらしいよ」

「今寝たのも確か9時でしたからピッタリですね」

「てか、今年は喜八郎だったか」

「今年は俺であってほしかったのに」



中学から続くお泊まり会の楽しみは、音根が誰に寄りかかり眠るかであり、この調子では、まだまだ恋は難しそうだ。



いつものオチ
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ