忍たま乱太郎

□その名は
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「あれ?そこにいるのはもしかして」



そこにいたのは、前に見たことのある忍たまの姿であり、その忍たまはどうやら状況を察したらしく、持っていた薬箱を開けると手当てを始める。

その様子をじっと見つめる音根だが、苦しそうに声を漏らす昆奈門の姿に音根の表情まで歪む。



「もう大丈夫ですよ。少しここで休ませてあげてください。では、僕はお使いの途中なので」

「な、何で、助けてくれたの……?」



昆奈門から忍たまの保健委員には何度かお世話になったと聞いたことがあり、前に見かけたこの場所まで来たわけだが、手当てをし
去っていこうとするその少年に、音根は問いかけた。

だが、返ってきた返事は笑ってしまうくらいお人好しなものであり、音根はフッと笑みを溢すとありがとうとだけ伝えた。



「保健委員だから……」



忍たまが言った言葉を呟くと、あの子は忍者には向かないなと思ってしまう。


しばらくして昆奈門の意識が戻ると、音根は自分の水が入った竹筒を昆奈門に差し出す。

受け取った水を飲むと、この手当ては忍たまがしてくれたと聞き、また仮ができてしまたようだと昆奈門は口許を緩ませる。



「あの忍たまもだけど。組頭、あなたもお人好しです」



敵の忍者でも関係なく手当てをしてしまう忍たまに、任務が終わったというのに自分を庇い怪我をする組頭。

そんな二人の行動は、音根には理解できないものだ。

それでも、言うべきことは伝えなければならない。



「一応言っておきます。ありがとうとございました……」



背を向けながら言われたありがとうの言葉に、昆奈門の胸が締め付けられ、気づけばまた音根を抱き締めていた。



「言ったはずだ。私は君の背を守るってね」

「その必要はありません。あれくらい一人でかわせましたから」



強がりながら言う音根を見て、ニヤけずにはいられない自分のこの気持ち。

最初は呼ばずにいたこの感情の名を、今なら口にしてもいいのかもしれないが、今はやはりまだ早いようだ。



その名は
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