忍たま乱太郎
□湖の逢い引き 後編
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「私は貴女のことが、風明さんのことが好きです」
ハッキリと伝えられた気持ちは、利吉の瞳を見ればわかってしまう。
これは冗談やイタズラなんかじゃなく、本当の気持ちなのだと。
「で、でも、私はただ厨房で皆のご飯を作るだけの人間で、利吉さんのようなプロの忍者の方には相応しくないと思いますし……」
「そんなことは関係ないですよ。恋愛は、誰に決められるでもなく、自分の気持ちで決めるものです。そして私は、貴女に恋をした」
真っ直ぐで真剣な利吉の想いを聞いて、音根の鼓動は騒がしさを増していく。
利吉と同じで、音根も自分の気持ちがすでに、答えを出していた。
こんなにも一人の人のことを考え、その人の一言一言が自分の胸を熱くする。
こんな気持ちを、利吉も自分に感じてくれていたのだと知り、音根は口許を緩めると、軽く自分の唇を利吉の唇に重ねた。
「昨日のと、そして今日のお返しです」
頬を桜色に染め、イタズラっぽいような無邪気な笑みを浮かべる音根に、今度は利吉が頬を染める番だ。
思いもしない告白の返事の仕方に、プロの忍者である利吉も耳まで真っ赤に染めている。
何とも言えない溜息のようなものが利吉の口から漏れると、フッと笑みを浮かべ口を開く。
「貴女って人は……。そんなに大胆なこともされるんですね」
「そうみたいですね。私自身も、こんな自分の行動に驚いてますが、最初にしたのは利吉さんですからね?」
笑みを浮かべる音根に、利吉も笑みを溢すと、二人の笑い声が青空に響く。
そのあとは二人、時間も忘れてしまう程に会話を楽しみ、そして今日も、こっそり小松田の目を盗み、二人仲良くあの湖へと行く。
今夜は満月、そして夜空には沢山の星々が散りばめられており、二人が向かう湖に映るこの夜空は、きっと綺麗に違いない。
湖の逢い引き 後編