薄桜鬼
□また1つイタズラの種が
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「ただ、理由もわからずに嫌われるってのが嫌なだけなんだ……」
「そっか。でもさ、それって直接本人に聞いた方がいいんじゃない?」
総司の言っていることは最もなのだが、いつも話そうとすると、小毬に避けられてしまうため、なかなか聞く機会が掴めないのだ。
結局総司から聞くこともできなかった平助だが、左之助も総司も、小毬が平助を嫌う理由を知っていようだ。
縁側に座り再び考えを巡らすが、嫌われるようなことをした覚えはなく、一人ではなかなか答えはでない。
「やっぱ総司が言うように、小毬に直接聞くしかないんだよな」
一人呟いた言葉に、ようやく気づいたようだなと返事が返ってきたため振り返ると、そこには一の姿があった。
「桜に嫌われるんじゃないかと気にしているようだが、人に聞いたところで答えはでないだろう。本当のことが知りたいのなら、桜に聞いてみることだ」
逃げていては知りたい答えもわからないだろうと言う一の言葉で、自分が小毬から聞くことを避けていたことに平助は気づいた。
聞けなかった理由は、機会を逃していたからでも、小毬から避けられていたからでもなく、知るのが怖かったからなのだ。
知らない今なら、小毬に声をかけることができる。
だが、もし嫌われている理由を知ってしまったら、どんな顔をして小毬に声をかけていいのかわからなくなる。
でもそれは、現実から目を逸らしていただけであり、このままの状態が続くだけだ。
このまま、知らないまま過ごせば楽なのかもしれないが、平助はこの関係のままでいるのが嫌だと、自分の中である決心をした。
「一くん、ありがとう。オレ、行ってくるよ。それと、総司と左之さんもありがとな!」
走って行く平助の背を見送り、隠れて様子を伺っていた総司と左之助が姿を表す。
「どうやら、平助は気づいていたようだな」
「平助のやつ、なんでこういうことには勘がいいんだ」
「まぁいいんじゃない。これで理由もわかるだろうしね」
平助の背中を押した3人は、このあとの二人のことを考えて笑みを浮かべる。
その頃、平助は、小毬の部屋の前まで来ていたのだが、なかなか声がかけられず立ち尽くしていた。