ナンバカ
□今はこのままで
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「え……?今日……?」
「ああ、脱獄するつもりだ」
この刑務所には傷の男はいないことがわかったらしく、ジューゴは今日脱獄することを決めた。
それは突然のことであり、巫兎の口からは言葉がでない。
「お前と話すのは、なんつーか、楽しかった……?」
「何で疑問系なのよ……」
「いや、何かこういうの初めてで……さ……ッ!?」
そう言いながらジューゴが巫兎へと視線を向けると、巫兎の頬には涙が伝っていた。
何で泣いてるのかわからないジューゴは慌てるが、その間も、巫兎の瞳からは大粒の涙が溢れだし止まらない。
「なんで泣いてんだよ!?」
「何でもない……ひっく……」
「何でもねーわけねーだろ!!」
こういう時どうしたらいいのかわからず、ジューゴは巫兎を腕の中へと抱き締める。
突然のことに、巫兎は驚くが、涙は更に溢れ出してしまう。
「嫌だよ、ジューゴ……ッ……ジューゴと一緒にいたいよ……ひくッ……ぅ……」
巫兎が思いを口にすると、ジューゴは巫兎の頭に手を置き慰める。
だが、その手が優しくて温かくて、巫兎の涙は止まらなくなってしまう。
しばらくジューゴの腕の中で泣くと、出る涙がなくなってしまったのか、ようやく涙が止まるが、巫兎は恥ずかしくて顔を上げられずにいた。
そんな巫兎の頭上から、思いもしない言葉がかけられた。
「なら、一緒に脱獄しようぜ」
「え……?」
あまりの驚きに、巫兎は伏せていた顔を上げ、ジューゴへと向く。
「私も、一緒に行っていいの……?」
「ああ!行こうぜ!」
ジューゴはニッと笑みを浮かべると、巫兎の腕を掴み、そのまま牢から連れ出した。
前を走るジューゴへと視線を向けると、巫兎の鼓動が高鳴る。
この高鳴りは、初めての脱獄に緊張しているからなのか、それとも、別の理由からなのかはわからないが、不思議と安心してしまう。
それはきっと、ジューゴがそばにいるから、そんな気がした。