ナンバカ

□絆で結ばれて
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その上、今日鍛練の監視をしているのは5舎の看守である八戒 猪里(はっかい いのり)なのだが。
猪里は猿門や他の看守と違い少し、というよりかなり軽いところがあり、今も監視をせずにベンチで寝転び雑誌を顔に乗せ眠っている。
こんなところを猿門に見つかれば大目玉をくらうのは間違いないが、それもいつものことだ。



「春はポカポカしてお昼寝に最適だよね」

「まぁな。春っつったら昼寝だよな」

「そうか?おれは桜だけどな」



ニコ、ウノが春の話を始めると、ずっと避け続けていた桜の話がジューゴからだされ皆が興味を持ち始める。

すっかり忘れてしまっていたが、ジューゴも巫兎と同じジャパニーズ出身。
またこの話で皆が桜を見たいなんて言い出しかねないと思い話を逸らそうと試みるが、桜で盛り上がる皆の間に入る隙はなく、すでに皆頭の中は桜のことだ。

一度猿門に断られているためすでに無理なのは皆わかっているだろうが、皆と桜が見られないのは残念だなと思ってしまう。

そんなことを考えていると、桜、いいじゃねぇかと声が聞こえ、視線を向けると先程までベンチで眠っていたはずの八戒の姿がある。

だが、いくら看守である八戒が賛成だとしても、他の看守や看守長である百式 桃子(ひゃくしき ももこ)は認めないだろう。

こうして特に何かがあるわけでもなく、今日も鍛練が終わり房へと戻る。
そして、何時ものように眠るのだと思っていたとき、突然房の戸が開き猿門がやって来た。

一体夜にどうしたのだろうかと不思議に思っている巫兎の手を、リャンとウパは掴み連れ出した先は演習場だ。

真っ暗でよく見えず、夜に鍛練でもするのだろうかと思っていると、突然辺りが明るく照らされ、暗くてよく見えなかった演習場が見えるようになる。

提灯の明かりが照らす演習場の真ん中には、今日鍛練をしていたときにはなかった大きな桜の木があり、桜の真下にはシートが敷かれ看守と囚人達の姿があった。



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