忍たま乱太郎

□自惚れあなたの言う通り
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「それで雑渡さんは、何方にご用があって来られたんですか?」

「私の用というのはね」



皆の視線が昆奈門へと注がれ、一体タソガレドキの忍び組頭がわざわざ忍術学園まで来て誰に用事なのか、皆興味があるようだ。

昆奈門は、いつの間にか肩に乗っていた伏木蔵を下へと下ろすと、歩みを進める。

そしてその足がある人物の前で止まると、周りが少しどよめき出したが、昆奈門が口を開くと再び静まり返る。



「風明 音根さん、君に用があって今日は来たんだ」

「え?」



先程から全く会話に参加していなかったというのに、まさかの自分に用と聞き首を傾げる。

面識はあるものの、わざわざ昆奈門が自分を訪ねに来るほどの理由など思いつかない。



「これを君に渡そうと思ってね」



そう言い音根の目の前に差し出されたのは、この辺りでは見たことのない美しい華一輪だった。



「とても素敵なお花ですけど、本当に私がいただいてもよろしいんですか?」

「勿論。そのために持ってきたんだからね」



音根は昆奈門の手から花を受け取るとお礼を伝え、部屋に飾りますねと笑みを浮かべる。

そんな音根の姿を見た昆奈門の目が一瞬細められ笑ったように見えたのだが、直ぐに背を向けてしまい、用は済んだから失礼するよと言い残し、食堂を出ていってしまった。



「雑渡さん、風明さんに会いに来たんですね。すごいスリルとサスペンスー」



結局、昆奈門の目的はさっぱりわからないまま翌日の朝を迎えると、またも食堂に昆奈門が現れ、今度は音根に小さな木箱を差し出した。

戸惑いながらも受け取ると、中を見るように促され蓋を開ける。
すると中には、如何にも高価そうな簪が入っており、流石にこんな高価な物は受け取れないと断る。



「気にすることはない」

「気にしますよ!こんな高価な物をいただく理由、私にはないんですから」



音根は木箱に蓋をすると、昆奈門にその木箱を返す。

受け取ってもらえないことがわかると、昆奈門は意外にもあっさりと帰ってくれたため、安堵したのも束の間。
部屋に戻ると何故か返したはずの木箱が文机の上に置かれていた。



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