忍たま乱太郎
□不運は幸運と隣り合わせ
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「もそもそ……俺はいい」
「私もここでゆっくりさせてもらう。それよりも小平太、お前いつの間に」
「さっきまであんなに遠くにいたのに」
「ああ、喉が渇いたんで飲み物を飲みに来たんだ」
そう言い自分の持ってきた荷物の中からペットボトルを取り出しごくごくと飲み始める。
飲み終えたあとは、いけいけどんどんと大声で何時もの言葉を叫びながらまた海へと入っていく。
すでに遠くまで泳いでいく小平太の姿は、先程と同じ豆粒サイズになっている。
「もうあんなところに行っちゃった」
「アイツのバカ元気なところは見ていて清々しいな。普段なら暑苦しいところだが」
「もそもそ……伊作も海に入ったらどうだ」
無口な長次の小さな声に伊作は頷き、そうだねと返事をすると、軽く準備体操をしてから海へと入った。
流石、小学生からずっと保健委員をやっていただけはある。
海に入ると音根が、海の中を歩いている姿を見つけ、これはチャンスだと思い近づいていく。
「音根」
「あ、伊作。伊作って泳げたんだね」
「うん。小学生の頃は泳げなかったんだけどね。そういう音根は泳がないの?」
先程から音根は歩いているだけで泳いでおらず、小平太並にはしゃいでいたのにと不思議に思っていた。
すると音根は苦笑いを浮かべながら、実は泳げないんだよねと答える。
「そうなの!?音根ならスイスイ泳いじゃいそうだけど」
「うん、よく言われる。でも、現実はそうはいかなくてね」
今まで伊作は不運なことばかりが起きていた人生だったが、これは幸運が回ってきたのかもしれない。
このチャンスを逃さないために、伊作は泳ぎの練習をしてみようと音根を誘う。
「でも、伊作に悪いから」
「ううん、気にしないで。悪いどころか幸せだよ」
「え?」
つい心の声が漏れてしまい、しまったと頬を染めるが、誤魔化すように伊作は、もう少し岸の近くで練習しようと言い歩き出す。
そして、なるべき仙蔵と長次の視界に入らない場所へ行くと、早速音根に泳ぎを教える。
勿論少しでも音根の力になれたらと思ったのは本当だが、下心がないかと言われれば嘘になる。