忍たま乱太郎

□捕まらないあなた 前編
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「綾部、今私はイラついてんのよ」

「ああ!また尾浜先輩に逃げられたんですね。可哀想に」

「こんっの減らず口がッ!!きゃっ!?」



虫の居所が悪い音根が喜八郎を懲らしめようと一歩前に出ると、再び足元の地面は崩れ音根は落下した。

そしてこれも喜八郎の落とし穴であり、間抜けにも、二度も自分は落ちてしまったわけだ。



「あ〜や〜べ〜!!」

「続きの穴でもほーろおっと」

「ちょっと!!縄梯子くらい下ろしてから行きなさいよ!!ちょっと、綾部ーッ!!」



人の気配が完全に周りから消え、音根は穴の中から出られない状態にピンチを感じた。

いくら叫んだところでやはり誰もいないのか、返事が返ってくることもない。

そんな現状に自分をしたのは喜八郎だが、もとあと言えば勘右衛門が逃げるような真似をするからいけないのだと、怒りの矛先は勘右衛門へと向く。



「本当に、恋仲、なんだよね……」



膝を曲げ、縮こまるようにして座り顔を伏せると目頭が熱くなる。

今にも泣いてしまいそうだったその時、頭上から梯子が下ろされた。

音根は目を腕で擦ると、その縄梯子に掴まりようやく地上に上がる。



「綾部、よくも私を置き去りにッ、って、あれ?」



校庭には誰の姿もなく、喜八郎が梯子を下ろしたとばかり思っていた音根は首を傾げる。

そんな不思議な出来事があった後、置き去りにしていった綾部に音根が鉄槌を下したのは言うまでもない。


そして翌日の朝食の時刻。
音根は食堂の中で仁王立ちしていた。



「音根ちゃん、そんなところで何してるの?」

「おはよう、雷蔵。今私は、勘右衛門が食堂に現れるのを待ってるのよ」



音根に声をかけてきたのは、同じ五年生の不破 雷蔵(ふわ らいぞう)だ。

ここで待っていれば必ず勘右衛門が現れるということを今頃思い付いた音根は、こうして勘右衛門が来るのを待ち構えているのだと説明すると、雷蔵は苦笑いを浮かべながら大変だねと口にする。



「まぁ、そういうことだから。雷蔵は気にしないで朝食食べてきてね」



その後もじっと待つが、なかなか勘右衛門は現れず、まさか朝食を食べないつもりではないかとも考えたが、それはないだろうと考えを消す。

すると、そんな音根に声をかけてきたのは、雷蔵に変装した同じ五年生の鉢屋 三郎(はちや さぶろう)と兵助だった。



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