忍たま乱太郎
□捕まらないあなた 後編
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「綾部、よくも私を置き去りにッ、って、あれ?」
あまりに近い距離のため、気配を消し隠れていると。
音根は周りをキョロキョロと見渡し首を傾げている。
どうやら喜八郎が投げ込んだと思ったらしいが、周りにはいないのだから音根には不思議でしかない。
そのあとはどうやら自分を探すのを諦めてくれたらしいが、勘右衛門は音根の後をそのあとも追い監視し続けた。
それから翌日の朝食の時刻。
朝食を食べに兵助と食堂に向かうと、食堂の入り口から、音根と雷蔵の声が聞こえ足が止まる。
どうやら自分が食堂に来るのを待っているらしく、兵助にどうしようと相談し考える。
「二人ともどうかしたの?」
二人に声をかけてきたのは三郎であり、いいところに来たと、勘右衛門は三郎に兵助の変装を施してもらうように頼む。
勿論そうなれば、同じタイミングで二人の兵助が食堂に行くわけにはいかず、今度の献立に豆腐が出たときにあげるからという条件で、兵助には朝食を遅れてとってもらうことに、二人食堂へと入っていく。
「あ、三郎と兵助、おはよう。ねぇ、勘右衛門見なかった?」
「勘右衛門?いや、私は見てないなぁ」
「そっかぁ。兵助は?」
「あ、えっと、俺が起きたときにはもういなかったから、もう朝食は済ませたんじゃないかな?」
咄嗟に思いついた言い訳だが、何とか音根は納得してくれたらしくほっとしたのも束の間。
勘右衛門が来ないなら仕方がないと、音根も一緒に朝食をとることになり、内心慌てだす。
だが、三郎が機転を利かせたため、自分は奥、その隣に三郎、音根という順でならんで食べることになり、何とかこれなら乗り切れそうだ。
「それにしても。恋仲になってもう一月は経つのに、その一月一度も会えないって何でなんだろ」
「そうだな、いっそのこと別れたらどうだろ?」
「ぶはッ!!」
味噌汁を飲んでいると、突然の三郎の一言に噎せてしまう。
チラリと隣の三郎を見れば、ニヤニヤとしているのだからイラッとするが、そんな自分を心配した音根が慌て駆け寄り背を擦りだしたため、鼓動は高鳴りそんな苛立ちなど気にしている余裕もなくなる。
しばらく噎せた後、ようやく落ち着き顔を上げると、音根に笑みを浮かべ礼を伝えた。
きっと自分の顔は赤いだろうが、今なら噎せたからだと思ってくれるだろうと思ったのだが、何故か音根は驚いた表情を浮かべると、慌てて自分の席へと戻り続きを食べ始める。
気づかれたのだろうかとも思ったが、何も言ってこないということは大丈夫なのだろうとほっとし、自分も続きを食べ始める。
朝食を食べ終わり音根と別れた後は、勿論三郎を睨み付けた。