忍たま乱太郎
□視線の先には
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「私は……」
「私は?」
「恋をしてしまったのだ!!」
あのナルシストで何時も自分の自慢ばかりをしている滝夜叉丸が恋と聞き、四人は一瞬思考が停止する。
まさか相手は自分なんてオチじゃないだろうなと三木ヱ門が尋ねれば、私なんかよりも遥かに素敵な存在だとまで言う滝夜叉丸に、四人は本気なのか冗談なのかさえわからなくなった。
「その相手って……」
「ま、まさか!?」
「音根ちゃん?」
「だったりして?」
四人でそれはないだろうと笑う中、その通りだとハッキリ断言する滝夜叉丸の目は本気だった。
あの滝夜叉丸にここまで言わせる人物がどんな人なのか、まだ見かけたことくらいしかない喜八郎と守一郎、そして、存在すら知らなかった三木ヱ門は興味津々と言った様子だ。
「あと気になってたんだけど、中庭で滝夜叉丸と風明先輩が話してるのをこの前見かけたんだけど、何の話をしてたんだ?」
「ああ、あの時か。あれは、忍術学園に来て日が浅い風明先輩が、私に場所を聞いてきたんだ」
勿論場所を教える前に、滝夜叉丸の得意武器である千輪の輪子のことや自慢話を聞かせたのだが、音根はその話を真剣に聞いていたようだ。
他の忍たまなら聞き流してしまうというのに、わざわざ千輪を使う姿が見たいとまで言っていたらしい。
楽しげに笑みを向ける音根に、滝夜叉丸はその後、忍術学園の中を案内して回ると、その間も音根は滝夜叉丸の話に笑みを浮かべたり、時には驚いたりと真剣に話を聞く。
いつも自分が話せば、目の前の相手はうんざりしているか、聞いているのかいないのかわからないような態度だったり、時にはいつの間にか逃げたしている者までいたというのに、年下の自分にもこんなに優しい言葉をかけてくれる音根に、滝夜叉丸は惹かれていった。
だが、そんな時間も過ぎていき、音根と別れたときには、不思議と心にポッカリと穴が空いたような感覚となり、それから誰に自分の凄さを伝えても、何故か気持ちが落ち込んでしまうようになっていた。
「私の頭からは、あの風明先輩の笑顔が忘れられなくなり、また会って話したいと思うようになったんだ」
「なんだ、滝夜叉丸にしては普通の恋だな」
「そうだね。でもいい話だよね〜」
何だかんだで普通の男だったんだなと納得している四人だが、恋をしたのなら、何かしらのアプローチはしたのだろうかと滝夜叉丸に尋ねる。
だが、どうやらあの日以来、音根を見かけることはあるものの、声をかけてはいないらしく、正確に言えば、何と声をかければいいのかわからないようだ。