忍たま乱太郎

□軽い言葉も本気の言葉
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「これからどうしたらいいんだろ」



悲し気に漏れた言葉は静かに消え、喜八郎は心に靄がかかった思いで家へと帰る。

何時もなら、音根と一緒に歩く帰路も一人だと寂しく感じてしまう。

付き合う前は一人で歩いていたというのに、今ではどうして一人で帰れていたのかわからない。
そんなことを考えながら重い足を前に出し歩いていると、後ろから声をかけられ振り返る。
するとそこには滝夜叉丸の姿があった。



「珍しいな、喜八郎が一人なんて」

「悪いけど、今は滝夜叉丸なんかに構ってる暇ないから」

「なんかとはなんだ、なんかとは!!まぁいい、それより元気がないようだが、何かあったのか?」



一番会いたくない人物であり、今一番聞かれたくないことを聞いてくる滝夜叉丸に、喜八郎は嫌そうな表情を浮かべる。

滝夜叉丸は喜八郎のことを嫌ってはいないが、喜八郎は滝夜叉丸のことを嫌っていた。
理由なんて忘れてしまったが、滝夜叉丸の自慢話が始まるとうんざりとするのだ。



「何故そんな顔をする?私ならいくらでも話を聞いてやるぞ。この、成績優秀で顔も良く――」



長くなりそうな自慢話には付き合いきれず、喜八郎は滝夜叉丸を置いてその場を去る。

だが、気づいた滝夜叉丸は慌てて喜八郎の後を追ってくると、横でぐだぐだとまだ一人で話している。



「あのさ、滝夜叉丸は僕の悩みを聞きたいわけ?それとも、自分の自慢話がしたいの?」



あまりに鬱陶しいので怒ったような口調で言うと、滝夜叉丸はフッと笑みを浮かべ、やはり悩み事があるんじゃないかと口にした。

しまったと思ったときにはすでに遅く、滝夜叉丸は話してみろと言ってくる。

本当はこんな話誰にも話したくなく、特に滝夜叉丸には言いたくないのだが、このまま放っておいても煩いだけだろうと思い、渋々先程の事を話す。



「てわけだから、もう放っておいてくれない」

「なるほど、喜八郎は音根にフラれてしまったというわけか。だが、まだ喜八郎は音根を想っていると」



放っておいてほしいのだが、滝夜叉丸は腕を組むと、私に任せておけ、と自信に満ちた表情を浮かべていた。



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