ONE PIECE
□擦れ違う想い
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日差しが強いお昼。
仲間の数人が甲板に出ていると、デレデレとした声が聞こえてくる。
「ナミすわぁ〜ん、ロビンちゅわ〜ん! 果汁100%のドリンクを持ってきましたよ〜」
「ありがとうサンジくん」
「丁度喉が乾いていたところよ」
今日もハルの恋人は仲間の女の子にデレデレであり、そんな彼に悲しげな視線を向けていた。
ハルとサンジが付き合いだして二ヶ月経つのだが、サンジのあの性格だけは無くなることはなく、いつものことだと思っていながらも、やっぱり目にするとそうもいかない。
「はぁ……」
「何溜息吐いてんだ?」
大きな溜息を吐くと、近くにいたルフィに気づかれ尋ねられた。
ルフィはいつも元気で、悩みなんて何もないようで、自分もルフィのようになれたらいいのに、なんて考えてしまう。
「ルフィが羨ましいよ」
「何がだ?」
「悩みがなくて」
「おれも悩みくらいあるぞ! 今日の朝飯は何かとか、おやつは何かとか、夜は何かとか」
やっぱりルフィが羨ましい。
自分もルフィみたいになれたらこんな思いしなくていいのだろうが、ハルにはルフィのようにはなれそうにない。
「どうぞプリンセス」
「……ありがとう」
そんなことを考えていると、突然目の前に飲み物が差し出され、顔を上げるとそこにはサンジの姿があった。
お礼を伝え飲み物を受け取ると、グラスを口に付け傾ける。
すると、口の中に果実の甘酸っぱさが広がっていく。
「美味しい! 夏にピッタリだね」
「お褒めに預かり光栄です」
お辞儀をするサンジを見て、クスッと笑みを浮かべると、突然ルフィの声が聞こえてくる。
「サンジ〜、腹へった〜、何か食い物くれ〜」
「ああ、待ってろ、今作ってやる。んじゃ、また後で」
サンジはルフィとキッチンへ行ってしまい、ハルは一人グラスを片手に海を眺め溜息を漏らす。
サンジと付き合っても特に変わったこともなく、付き合う前と何も変わらない毎日に少し寂しさを感じてしまう。
二人の時間もなかなかできず、本当に付き合ってるのか不安になることさえある。
こんなに悩んでいても、サンジが気づくことはなく、サンジは自分との時間がなくても平気なのかもしれないと考えれば考えるほど落ち込んでしまう。