忍たま乱太郎

□捕まらないあなた 前編
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好きな人と付き合えて幸せなはずなのに、何故か幸せと思えない。

その理由はわかっているものの、どうすることもできないのが今の状況だ。



「兵助!!勘右衛門は?」

「勘右衛門ならさっき出ていったよ」

「また?はぁ……。何処に行ったか知らない?」

「ごめん」



音根は恋仲である尾浜 勘右衛門(おはま かんえもん)の部屋を訪れたが、そこにいたのは、勘右衛門と同室の久々知 兵助(くくち へいすけ)の姿だけだった。

どうやらつい先程までいたようだが、またも音根が来ることを察知し逃げたようだ。

兵助も行き先を知らないなら、あとは片っ端から探すしかない。



「わかった。じゃあ、私は勘右衛門を探しに行くからまたね」



廊下に出ると、音根は忍術学園中を探し回る。

そんな音根の姿を目にする忍たま達は、毎日のことなので気にならなくなっていた。


勘右衛門と音根が恋仲であることは皆知っているのだが、恋仲になって以降、二人が一緒にいる姿を見かけた者はいない。

付き合って早一月。
その間勘右衛門はずっと音根と会わないように逃げ続けているのだ。



「もう、何処に行ったのよ。って、うわぁっ!?」



校庭に来たところで、音根の足元の地面が突然崩れ落ち、そのまま下に落下してしまう。

こんなことをする人物は一人しかおらず、音根はその人物の名を穴の中から叫ぶ。



「四年い組、綾部 喜八郎ッ!!いるのはわかってるのよ。出てきなさい!!」

「おやまあ。誰かと思えば、女の子なのに忍たまに入った物好きな音根先輩じゃないですか〜」

「嫌な説明ね。兎に角早く梯子を下ろしてちょうだい」



下ろされた縄梯子で上に上がれば、そこにいたのはやはり綾部 喜八郎(あやべ きはちろう)の姿だ。

喜八郎は穴堀が趣味のため、よく校庭で穴を掘っているのだが、いくら競合区域とはいえ、こう幾つも落とし穴を掘られては迷惑だ。

それでも誰も何も言わないのは、すでに皆一度は注意したからだ。

それでも、誰が何を言おうと聞くような性格ではないため、周りも諦めている。



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