忍たま乱太郎
□捕まらないあなた 後編
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好きな人と付き合えて幸せな日々が待っている、はずだった。
だが、現実はそうもいかないらしく、今日もドタバタと走ってくる足音が聞こえてくる。
そして、勢いよく開けられた扉から姿を現したのはやはり、自分の恋仲である音根だ。
「兵助!!勘右衛門は?」
「勘右衛門ならさっき出ていったよ」
「また?はぁ……。何処に行ったか知らない?」
「ごめん」
音根が探す人物は目の前にいるのだが、流石三郎に変装してもらっただけあり全く気づかれる様子はない。
ただ、愛しい人を前に、平然としているのはかなりきついものだ。
「わかった。じゃあ、私は勘右衛門を探しに行くからまたね」
部屋の中をキョロキョロと見回したあと、音根はその場から走り去ってしまう。
ようやくホッと安堵する勘右衛門だが、それを早一月は繰り返しているのだからそろそろ慣れてもいいようなものの、音根を前にするとやはり鼓動が高鳴り返事を返すので精一杯だ。
こんな自分が変装を解き、音根の恋仲として向き合えば、きっと何も話せず音根に嫌われてしまうかもしれない。
「それだけはさけなければ」
勘右衛門は立ち上がると、また何時ものように自分を探し回る音根の後をこっそり追う。
校庭までついたところで音根の足が止まると、やっぱり音根は怒っていた。
「もう、何処に行ったのよ。って、うわぁっ!?」
すると突然、音根の足元の地面が崩れ落ち、そのまま下に落下してしまう。
普通なら助けに行くところだが、何時ものことのため、今日もアイツが現れるだろうと見ていると、別に掘られていた穴から喜八郎が顔を出し、音根が落ちた穴へと近づいていく。
離れた場所から見ている勘右衛門には、二人が何を話しているのかはわからないが、喜八郎が縄梯子を投げ入れると、音根が上がってくる。
やはり怒っているのか、音根は何かを言っているようだが、何時ものことながら喜八郎は平然としている。
そんな喜八郎の態度に怒ったのか、音根の足が一歩前に踏み出されたとき、またも地面は崩れ落ち、離れた場所からでも悲鳴だけは聞こえてきた。
喜八郎は音根の落ちた穴に視線を向けると、今度は助けることなくその場を離れていく。
完全に周りには誰もいなくなり、勘右衛門は慌てて縄梯子を手に取り穴へと投げ込と、音根が上がってこないうちに近くの茂みに姿を隠す。