忍たま乱太郎

□視線の先には
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四年い組の(たいらの) 滝夜叉丸(たきやしゃまる)は、忍術学園中の忍たまが知っているほどの自慢人間だ。

自分がどれだけ凄いかということを長々と話すため、誰もが関わりたくないというなんとも厄介な人だ。

そして今日も、一人の忍たまが犠牲になっていた。

その犠牲となった人物は、滝夜叉丸と同じく五年い組の綾部(あやべ) 喜八郎(きはちろう)だ。



「綾部 喜八郎!!いいところにいたな。これから私の話を」

「聞きません。というより聞きたくないから」



そう言いながらその横を通り過ぎようとする喜八郎だが、その道を滝夜叉丸が塞ぐ。

ムッとする喜八郎だが、このままでは通してもらえそうにないため、渋々話を聞くことになった。

内容などわかりきっているため、適当に聞き流そうと考えていたのだが、何やら今日の話は何時もと違う。



「でだな、風明先輩が」

「ちょっと待って。さっきから風明先輩風明先輩って、どうしたの?」

「何がだ?私が喜八郎、今お前に伝えたいのは、風明先輩の素晴らしさだ」



何時も自分の自慢話しかしない滝夜叉丸が他人を褒めることなど珍しいことであり、喜八郎は目をぱちくりとさせている。

長々と話す滝夜叉丸の話に出てくる風明というのは、二人より一つ上の先輩であり、女で唯一の忍たま、六年は組の風明 音根のことだ。

その後も、一頻り話すのは音根の事ばかりであり、その日、喜八郎が聞いた話は全て音根に関してのことだけだった。

そんな滝夜叉丸を不思議に思っていたのは喜八郎だけでなく、今まで幾度となく滝夜叉丸の自慢話を聞いてきた皆も思っていたようだ。



「何だか最近、滝夜叉丸の様子がおかしいんだよねぇ。まぁ、元々変わった人だけど」

「あはは、僕達四年生は、皆個性が強いからね。それを言ったら皆変わってるのよね〜。でも、滝夜叉丸の様子が可笑しいのは僕も気になってたんだよね」



食堂で喜八郎と話すのは、同じ四年生の斉藤(さいとう) タカ(まる)だ。

タカ丸は四年生ではあるが、年齢は他の四年生より上のため、四年生達からはタカ丸さんと呼ばれている。

普通ならタカ丸は六年生になるのだが、途中編入、その上、忍者の知識が全くないことから四年生と共に学ぶこととなった。

そのため、時々下級生と一緒に授業を受けることもあり、普段はメモをとり勉強熱心な一面もある。



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