忍たま乱太郎
□違うようで似ている二人
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五年い組、久々知 兵助は、学園でもほとんどの忍たまが知るほどの豆腐好きであり、自分で豆腐を作り、先生や忍たま達に振る舞ってくれることもある。
その豆腐は、やはり豆腐好きが作るだけありとても美味しいのだが、一人のくのたまはそうではないらしい。
「兵助、また豆腐作ってるの?」
「ああ」
素っ気なく答えながら、兵助は黙々と作業を続ける。
そんな姿を眺めているのは、くの一教室の音根だ。
「よし、完成!」
「どれどれ」
「あっ!おい」
完成したばかりの豆腐が乗せられた皿をひょいっと横から取ると、音根は箸でパクリと豆腐を一口頬張る。
そして、その第一声に発した言葉は何時もと同じ、美味しくないの一言だ。
「豆腐作りなんて辞めたら?そもそも、忍者が豆腐なんて作ってどうすんのよ」
「別にいいだろ。それに、豆腐は世界一美味しい食べ物だ。この良さがわからない音根に豆腐の味なんてわかるわけないさ」
音根から食べかけの豆腐を奪い取ると、箸で一口頬張り、やっぱり美味しいじゃないかと頷く。
そんな兵助に背を向けると、これだから豆腐バカは嫌なのよと言い残し、音根はその場を去った。
だが兵助は気づいていない。
去っていく音根の顔が悔しげに歪んでいることに。
そして、その頬がほんのり色づいていることに。
「音根」
「八左ヱ門……」
呼び止められ振り向けば、そこには兵助と同じ忍たま五年生の竹谷 八左ヱ門(たけや はちざえもん)の姿があった。
八左ヱ門とは顔見知りではあるものの、あまり話したことがないため口が開けずにいると、八左ヱ門が音根の顔を覗き込んだ。
近い距離に驚いていると、顔が赤いけど熱でもあるのかと聞かれ、先程のことを思い出し更に顔は熱くなる。
兵助は気にしていなかったようだが、いくら箸が新しい物とはいえ、音根が一口食べた豆腐を兵助は口にしたのだ。
音根は一口しか食べていないため、豆腐に触れたのは新しい箸だけで間接キス等ではないのだが、鼓動が煩く高鳴り顔は熱くなってしまう。