忍たま乱太郎
□湖の逢い引き 前編
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忍たまの特別授業のために来ていた人物が中庭で木に背を預け休んでいるのを見つけると、音根は起こさないようにその場から離れようとしたのだが、どうやら遅かったようだ。
気配に気付き目を覚ましてしまったその人物の優しい声音に呼び止められ、音根はくるりと反転すると、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「すみません。休んでいるところを起こしてしまって」
「いえ、気にしないでください。そろそろ次の任務に向かおうとしていたところですから」
音根と同い年のこの人物は、ここ、忍術学園の教師である山田 伝蔵の息子、山田 利吉。
利吉はフリーの忍者であり、時々こうして忍者のたまごである忍たま達にプロの忍者として色々と教えたり、父親である伝蔵の溜まった洗濯を取りに来ている。
そして今日も利吉は、爽やかな笑みを浮かべると立ち上がり、その場を去ってしまう。
去り際に、この場所、休むのに丁度いいですよねと言われ振り返ったが、すでに利吉の姿はなかった。
まるで、音根がいつもここで休んでいるのを知っているかのような発言だが、考えすぎだろうと、音根は木に背を預けると瞼を閉じる。
今日も聞こえる葉のざわめき。
そして、心地いい風が包み込み、音根を眠へと誘う。
だが、鐘の音が聞こえると共に音根の眠気は吹っ飛び立ち上がる。
「食堂に戻らなくちゃ」
授業が終わる合図でもあり、忍たま達が食堂に来るお昼を知らせる合図でもある鐘の音に、音根は慌てて食堂に戻る。
すでにご飯は、食堂のおばちゃんと一緒に作り出来上がっているため、音根は忍たまやくのたまがやって来ると出来上がったお昼ご飯を手渡していく。
「私はAランチでお願いします」
「私も土井先生と同じAランチで」
「はい。土井先生と山田先生はAランチですね」
お昼刻、勿論やって来るのは忍たまやくのたまだけでなく先生達もだ。
一年は組のよいこ達がやって来た後に続き、一年は組の教師である伝蔵と土井 半助が食堂にやって来た。