忍たま乱太郎

□軽い言葉も本気の言葉
1ページ/5ページ


恋の終わりとはいつも突然だが、そんな終わりは自分達には来ないと思っていた。
だが、どうやら違ったらしい。

ここに一組のカップルがいる。
高校1年で同じクラスでもある、い組の風明 音根と綾部(あやべ) 喜八郎(きはちろう)

授業も終わり下校時間、何時もなら一緒に帰るのだが、今日は大事な話があるからと、人目につかない場所まで連れてこられた喜八郎の耳に突然の別れの言葉が告げられた。



「ごめんなさい……」

「え?全然わからないんだけど」



一方的に別れを告げられ謝られても、全く理由がわからず、何か自分はしてしまったのだろうかと考えるが、思い当たることもなく、本人に直接訪ねると、答えはあっさりとわかってしまった。

どうやら他に好きな人ができたようだ。
それは、同じクラスの(たいらの) 滝夜叉丸(たきやしゃまる)なのか、それともクラスは違うが同じ学年の田村(たむら) 三木ヱ門(みきえもん)なのか、喜八郎が知る限りでも沢山の人物の名が上がる。

だがどうやら違うらしく、音根は首を横に振ると、上級生の先輩であることを話す。

眉を寄せ申し訳なさそうに視線が下へと落とされる音根の姿に喜八郎は、自分の胸にぐっと掴まれたような痛みを感じる。

だが、そんな表情を見せてしまえば音根を心配させてしまうと思い、何時もの軽い口調で、そっか〜なら仕方ないねと口にする。

それでも音根の表情が曇っていたため、喜八郎はちょっとした嘘をついてしまった。
その嘘とは、自分にも実は他に好きな人が出来たというものだ。
同じ様に自分にも好きな人が出来たとわかれば、音根の罪悪感も少しは軽くなるだろうと思ったからこその嘘だった。
そして喜八郎の思った通り、自分と同じなんだと知った音根の表情は少し柔らかくなる。



「まぁ、そういうことだから」

「うん。あの、えっと、都合のいい話だと思うけど、これからは友達としていられないかな」



不安そうに尋ねてくる音根に、喜八郎は勿論いいよと軽い返事を返す。

その言葉を聞いた音根は笑みを浮かべ、ありがとうとお礼を言った後、一人で帰ってしまう。

だが、その背を見詰める喜八郎の瞳は悲しみの色に染まっていた。
あんな一方的な別れだったというのに、今も音根の事が好きな自分は何故受け入れてしまったのかと後悔する。
それも、あんな嘘までついて。

自分が傷つくとわかっていても、音根に悲しい顔なんてしてほしくなかった。



次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ