ナンバカ
□君の声は、震える鈴の音のようで
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今日からこの南波刑務所に入ることになった女がいた。
女が入るのは3舎6房なのだが、そこの主任看守部長である三葉 キジ(みつば きじ)から聞いていた6房の男二人は、女が入ることを待ち遠しく思っていた。
「キジさんまだかな」
「キジさんの話じゃかなりの美人らしいからな。トロワ、お前変なこと言うんじゃねぇぞ!」
「やだなぁ、僕はハニーくんとは違うんですから。ハニーくんこそ変なこと言って引かせたりしないでくださいよ?」
何時ものように喧嘩が始まりかけたそのとき、房の鍵が開きキジが中へと入ってくる。
その瞬間、二人の喧嘩はピタリと止み、視線は扉へと向けられた。
「ほらアンタ達、喧嘩はおしまいよ!ほら、アナタはこっちに来なさい」
キジの声で扉からひょっこり顔を出したのは、二人のストライクゾーンド真ん中の女だった。
何時もならすかさず口説く二人だが、この時だけは言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くすだけだ。
「この子が今日からこの6房に入る巫兎よ!って、何二人とも顔赤くしてんのよ」
キジの声で我に返った二人は、我先にと巫兎の手を取り自己紹介をする。
「綺麗なお嬢さん初めまして。僕はトロワと申します」
「私はハニーと申します」
キラキラとイケメンオーラを輝かせた二人に両手を取られた巫兎はというと、その顔はどんどん青ざめている。
その様子を見ていたキジは、片手で頭を押さえながら溜め息をつく。
そして次の瞬間、巫兎の悲鳴が3舎中に響き渡った。
「キジさん、これって……」
「女に悲鳴を上げられるなんて……」
二人がショックを受けるのも無理はない。
悲鳴を上げた巫兎は今、ガクガクと震えながら房の隅で座り込んでいるのだから。
今までかっこよすぎるが故に悲鳴を上げられたことはあるものの、今回の悲鳴はそれとは全くの別物であり、二人は一体何が起きたのか理解不能だった。