ナンバカ
□秘めた想いに期待をし
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お昼の暖かな日差しの中、演習場のベンチに座り競馬新聞を見ながらサボっている一人の男がいた。
この男こそ、5舎主任看守である八戒 猪里なのだが、仕事もせずにいつもサボることばかりを考え、競馬や麻雀などを仕事中にするなどかなりのサボり魔だ。
注意したところで反省などする筈もなく、結局サボる毎日となる。
「おっ!そろそろ競馬中継が始まる時間だな」
「い〜の〜り〜せ〜ん〜ぱ〜い〜ッ!!」
競馬中継を見に休憩室へ向かおうとする猪里だったが、背後から殺気を孕んだ声が聞こえ振り返ると、そこには、最近入ったばかりの新人看守の姿がある。
「今は8房の鍛練の様子を見張るのが仕事のはずですが、その手に持っているものはなんですか?」
「け、競馬新聞……」
「はい、没収!!」
巫兎は猪里から新聞を取り上げると、キッと鋭い視線で睨み付けた。
そんな巫兎の視線に猪里は、頬を掻き苦笑いを浮かべているが、ほおっておけばまたサボるのは目に見えている。
「どうせ私がいなくなったら競馬中継を見に行くつもりでしょう」
「ははは、バレたか。あ!お前もどうだ?一緒に競馬」
「結構ですッ!!」
猪里が言葉を言い終わるより先に巫兎は拒否する。
猪里が仕事をサボるのはいつものことで、今日はサボらせまいと巫兎は猪里の隣に座る。
「あれ?お前仕事しなくていいの?」
「はい。今日の私の仕事は猪里先輩がサボらないように見張ることですから」
「ゲッ!マジかよ……」
「はい。猿門主任に頼まれましたから!」
ここ5舎には、主任の悟空 猿門、副主任の八戒 猪里、そして他に、私も含め4名の看守もいるのだが、巫兎はここの主任である猿門に憧れている。
囚人にも看守にも厳しく、時に優しく、囚人達との手合わせや鍛練をする姿はとてもかっこよく、尊敬する者も少なくない。
だが、そんな人が主任を務めるこの5舎で、何故副主任がこんなサボり魔なのか、巫兎は納得できずにいる。