ナンバカ
□時が好きを変えていく
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好きには、恋愛、友情など、色々な種類がある。
そしてここにも、そんな好きの種類が関係する男女がいる。
「ボクは、巫兎さんのことが……好きですッ!」
「ウパくん……。ありがとう、私も好きだよ!」
「本当ですか!?」
「うん!リャンくんやチィーさん、猿門主任も皆、私は好きです!」
ニコリと笑みを浮かべながら答える巫兎に、そうじゃないでしょうと小さな声で呟いたウパの声が届くことはなく、折角勇気を出して告白したにも関わらず、その本当の想いに巫兎は気づかない。
そんな二人のやりとりを少し離れた場所から見つめる3つの影がある。
「あ〜、やっぱ58番のヤツダメだった見てぇだな」
「そのようですね」
「まぁ、俺ら3人も同じ返事だったしな〜」
影の正体は、ウパと同じく巫兎に告白をしている3人の姿だった。
その3人とは、この5舎の看守である悟空 猿門、そして、5舎8房の囚人、囚人番号2番のリャン、同じく、5舎8房の囚人で、囚人番号71番のチィーだ。
3人共、ウパと同じく巫兎に告白をしたのだが、返事はウパと同様、巫兎の中では複数の好きの中の一人でしかなかった。
「もしかして巫兎ちゃん、人を好きになったことないとかだったりして?」
「そりゃねぇだろ」
「いえ、猿門さん、もしかすると……」
まさかと思いながら3人の視線が巫兎へと向けられる。
そこには、今も楽しそうにウパと話す巫兎の姿があり、ウパは少し表情が曇っているようだ。
「あれ、傷つくんだよね……。ふった本人は気づいてないけど」
「あぁ……。だがよ、巫兎が人を好きになったことねーとか、ありえねーだろ」
「そうですね。私は巫兎さんに振り向いていただけるよう、もっと相応しい男になって見せます!」
そんな会話がされているなど、巫兎もウパも知るわけもなく、フラれたウパの心は傷ついていた。
ただ好きが違うだけであり、ウパの好きの種類が違うことに、巫兎は気づいていないだけなのだろうが、すでに恋としての好きではないのならフラれたと同じことだ。