ナンバカ

□引き返すことは不可能
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4舎地下牢獄には、一人の囚人が収容されている。

視覚は皆無ではあるが、その一方で他の感覚が研ぎ澄まされているため、目が見えているのではないかと思ってしまうほどだ。

だが、地下牢獄に収容されるような囚人だ、どんなことをしでかしたのかなどわからず、上も詳しいことは誰も話さない。

勿論地下牢獄に近づくような者などおらず、4舎の主任看守である四桜 犬士郎が様子を見に数回訪れる程度だ。



「犬ちゃん、その人誰?」



この牢屋の中にいるこの囚人こそ、地下牢獄に収容された危険人物である囚人、囚人番号634番のムサシだ。

そして、今日は何故か犬士郎と一緒に女がこの牢獄に訪れていた。



「ああ、彼女は」

「どうも初めまして!今日からムサシちゃんのお世話をすることになった巫兎です!」



何やらテンションが高い女にムサシは苦笑いを浮かべながらも、よろしくと挨拶をする。



「巫兎、相手は囚人だ、番号で呼べ」

「えー、ムサシちゃんのが可愛いじゃないですかー」

「番号だ。俺はこれから仕事があるので失礼する。あとは任せたぞ、巫兎」



それだけ言うとムサシに何の説明もないまま、犬士郎はその場を去ってしまった。

残った巫兎になんて声をかけたらいいのかわからず戸惑っていると、何やら巫兎がごそごそとしだし、その手には鍵が握られているらしく、金属の音が聞こえる。

一体何をするのだろうかと思っていると、ガシャンと音が響き、巫兎が牢の鍵を開けたことがわかる。

そしてその足音はムサシへと近づき牢の中へと入ってきた。

今のムサシには音だけが頼りだが、ふわりとシャンプーの香りがし、直ぐ近くにいることがわかる。



「え!?何やってるの!?」

「何って、こうした方のが話しやすいでしょ?鉄格子越しに話すってなんか嫌だもの」



さっきから巫兎の行動には驚かされるが、まず気になったことがあり思いきって声をかけてみようと口を開く。



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