ナンバカ
□先の未来は二人の秘密
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13舎13房には、囚人番号25番のニコという特異体質の持ち主がいる。
未知の病気や食物アレルギーを多数持ち、他人の動きを伝染されたようにそっくりに真似できる。
そのため、日常的に多くの薬を服用しており、毒薬の類が効きにくい。
過去にスラム街でドラッグのバイヤーをしていたところを逮捕、保護され、注射と薬を嫌がり脱獄を繰り返してきたが、現在は本人の好む味の飲み薬で対処しているため、むしろ投薬の時間が一番の楽しみとなっている。
そんなニコには、今誰よりも大好きな存在がいた。
「巫兎ちゃん、来たよ!」
「ニコくんいらっしゃい。じゃあ、今日のお薬を用意するから、そこのベッドで横になっててね」
「はーい」
医務室は普段、御十義 翁が診察や治療などをしているのだが、最近忙しいらしく、そんな翁の手伝いを巫兎がしてくれている。
巫兎は見た目が可愛くその上優しいため、囚人や看守から好意を寄せられることも少なくない。
そしてニコも、秘かに巫兎を想う一人だ。
だが本人は、恋愛などしたことがないため、巫兎に向ける好きと他の皆に向ける好きの区別ができていない。
そのため、この二人が恋愛に発展するということはなく、お互いに好きと言い合ってはいるものの、それを恋愛としてとは思っていない。
そして巫兎は、ニコのことを弟のような存在として見ており、この二人が恋愛に発展することはまずないだろうと、ニコと同じ13房の囚人は思っている。
「はい、今日の投薬はこれでお仕舞い!後はこの薬を決まった時間にいつも通り飲んでね」
「うん!あ、あのね、巫兎ちゃん」
「どうかした?」
「えっと、もう少しここにいてもいいかな……?」
そんな風に聞かれたら断れるはずもなく、今は誰もいないからいいよと巫兎は甘くなってしまう。
そんな巫兎の言葉にやったーっと喜んだニコは、嬉しそうに巫兎に抱きつく。