ナンバカ
□君は誰のモノになるのだろうか
1ページ/5ページ
高嶺の花、それは自分には決して手にいれることのできない花だ。
なのにそんな花は、南波刑務所に存在し、直ぐ近くに手を伸ばせば届く距離に存在している。
「チィーさん、今日も鍛練はサボりですか?」
「まぁね、こんな暑い中俺みたいなヤツが走れるわけないしさぁ」
そう、手を伸ばせば届く距離にいるのに、チィーは触れられない、何故なら、自分みたいな囚人が触れていい存在ではないからだ。
いつも凛としていて、それでいてチィー達囚人のこともしっかりと見てくれる、そんな巫兎にチィーは惹かれていた。
だからといって、気持ちを伝えようとかどうこうする気はなく、ただ巫兎の笑顔が見られればそれだけで満足よかった。
看守である巫兎が囚人なんかを相手にするわけもないのだから、最初から夢なんて見ず諦めた方のが傷つくこともない。
「ふふ、とかなんとか言って、ただサボりたいだけですよね?」
「あ、バレた?」
「仕方ないですね。猿門主任には内緒にしておきますけど、明日はちゃんと鍛練に参加してくださいね!」
そう笑顔で言う巫兎が何故こんなに甘いのか、普段は凛としていて真面目に仕事をしているのに、こうして甘くするから勘違いをしてしまう囚人も少なくない。
だがチィーはわかっている、これはただ巫兎が甘いだけであり、自分だけが特別じゃないのだと。
だから期待などはしない、すれば傷つくのは自分なのだから。
「アナタはまたサボりですか?」
「本当にクズだな、資源ゴミと出した方がいいんじゃないか?」
「そうですね、いても邪魔なだけですから」
「サボりは合ってるけど、いつになく酷い言われようだなぁ……」
今日の鍛練を終えたリャンとウパが二人の元へとやって来ると、来て早々に酷い言葉の数々を連発する。
だがそれもそのはずだ、チィーが話していたのは巫兎であり、毎日リャンとウパは巫兎にベッタリなのだから、妬きもちだって妬くのは当然だ。