ナンバカ

□君は誰のモノになるのだろうか
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高嶺の花、それは自分には決して手にいれることのできない花だ。

なのにそんな花は、南波刑務所に存在し、直ぐ近くに手を伸ばせば届く距離に存在している。



「チィーさん、今日も鍛練はサボりですか?」

「まぁね、こんな暑い中俺みたいなヤツが走れるわけないしさぁ」



そう、手を伸ばせば届く距離にいるのに、チィーは触れられない、何故なら、自分みたいな囚人が触れていい存在ではないからだ。

いつも凛としていて、それでいてチィー達囚人のこともしっかりと見てくれる、そんな巫兎にチィーは惹かれていた。

だからといって、気持ちを伝えようとかどうこうする気はなく、ただ巫兎の笑顔が見られればそれだけで満足よかった。

看守である巫兎が囚人なんかを相手にするわけもないのだから、最初から夢なんて見ず諦めた方のが傷つくこともない。



「ふふ、とかなんとか言って、ただサボりたいだけですよね?」

「あ、バレた?」

「仕方ないですね。猿門主任には内緒にしておきますけど、明日はちゃんと鍛練に参加してくださいね!」



そう笑顔で言う巫兎が何故こんなに甘いのか、普段は凛としていて真面目に仕事をしているのに、こうして甘くするから勘違いをしてしまう囚人も少なくない。

だがチィーはわかっている、これはただ巫兎が甘いだけであり、自分だけが特別じゃないのだと。

だから期待などはしない、すれば傷つくのは自分なのだから。



「アナタはまたサボりですか?」

「本当にクズだな、資源ゴミと出した方がいいんじゃないか?」

「そうですね、いても邪魔なだけですから」

「サボりは合ってるけど、いつになく酷い言われようだなぁ……」



今日の鍛練を終えたリャンとウパが二人の元へとやって来ると、来て早々に酷い言葉の数々を連発する。

だがそれもそのはずだ、チィーが話していたのは巫兎であり、毎日リャンとウパは巫兎にベッタリなのだから、妬きもちだって妬くのは当然だ。



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