ナンバカ
□先の未来を夢見て
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5舎8房の囚人、囚人番号58番のウパには、自分だけの特等席があった。
その特等席というのは、同じ8房の囚人である囚人番号211番、巫兎の膝の上だ。
「ウパってさ、やっぱ子供だねぇ」
「ボクは子供ではありません!!」
ウパの年齢を知るものはいないが、身長は135センチと低く、見た目からして他の囚人達より遥かに年下であることは間違いないだろう。
だが、ただの子供というわけではなく、気功使いであり、強力な気功術を放つことができ、他にも空中飛行が出来たりとただ者ではない少年だ。
「えー、だって今も巫兎ちゃんの膝の上に座ってるじゃん」
「ッ……これは、この場所が落ち着くからです!!」
ウパは子供扱いされることを嫌い、子供と言うチィーに否定をするが、そんなウパにチィーは、そっかぁと言いながら笑みを浮かべている。
そんなやり取りに巫兎まで笑みを溢すと、巫兎さんまでボクを子供扱いするんですかと、ウパは眉を顰め巫兎を見詰める。
「違うよ、ウパが可愛いなと思って」
「やっぱりアナタもボクを子供扱いしてるじゃないですか!!ボクは男です、可愛いなんて言われても嬉しくありません!!」
どうやら怒らせてしまったらしく、ウパは視線を巫兎から外すと前へと戻してしまう。
だが、怒ってはいても膝の上からは降りようとしないウパはやっぱり可愛くて、つい口許が緩みそうになるが、更にウパを怒らせてしまうと思い、巫兎はぐっと耐えた。
「あらら、怒っちゃったみたいだねぇ」
「チィー、元はと言えば貴様が余計なことを言うからだろう」
房の隅でチィーとリャンが話している間巫兎は、どうしたらウパの機嫌が直るだろうかと考えていた。
つい可愛いなんて言ってしまったが、ウパは男の子であり可愛いなんて言葉を言われるのは嫌に決まっている。
そんなことにも気づけないなんてダメだなぁと落ち込みそうになる巫兎だが、今は落ち込むよりウパに謝らなければと、伏せかけた顔を上げると膝に座るウパに声をかけた。