ナンバカ
□人を思い人を想う
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ここ、4舎には、今まさに恋をしている者が二人いた。
だが、この二人の恋は結ばれないものであり、そんな二人の恋バナトークが今日も始まっていた。
「双六一……看守長の心を奪うとは、なんと卑劣な男だ……!!」
「ちょっと待ってください主任!逆ですよね?双六さんの心を奪ったのが看守長ですから!!」
「何を言っているんだお前は、それこそ逆だろう」
実際のところは、看守長が想う相手は13舎主任の双六 一で間違いないのだが、何故か巫兎は双六 一が看守長を好きだと勘違いをしている。
そのため4舎では、同じ言い合いが毎日のように交わされていた。
「ところで主任って、看守長のどこを好きになったんですか?」
「無論、あの方の全てだ」
「聞いた私がバカでした……」
そういう貴様は双六 一のどこを好きになったのかと犬士郎に質問で返されると、巫兎も無論犬士郎と同じ答えとなるのは言うまでもない。
こんな二人だが、犬士郎はここ4舎の主任であり、巫兎は4舎の看守でもある。
一見言い合いばかりの二人に見えなくもないが、合うときはとことん気が合ってしまうのもこの二人だ。
「あっ!聞いてくださいよ主任!」
「なんだ?」
「今日休憩中に双六さんとお会いしたんですよ!!もう会えただけで心臓が壊れちゃいそうで」
頬を赤く染め、両手で押さえるようにしてニヤけている巫兎に、犬士郎は頷き口を開く。
「私も、看守長とお会いする時は胸が焦がされるような感覚になる」
「ですよね!!好きな人を一目見られるだけで」
「幸せを感じることができるからな」
一度息が合うと、ここからは二人永遠とお互いの好きな相手や感情などについて話始め、そんな二人の会話を中断させるのは、ここ地下牢に収容されている囚人の声だ。
そう、二人が話している場所は4舎の地下牢であり、そこにもちゃんと囚人はいる。