ナンバカ
□気付いたのはアナタだけ
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3舎6房の囚人、囚人番号211番の巫兎には、誰にも内緒の秘密があった。
それは、女だということを皆に隠していることだ。
このことを知っているのは、ここ、南波刑務所の看守長である百式 百子ただ一人。
何故こんな事態になっているかというと、看守達に配られた巫兎のデータの性別が間違っていたのが原因だ。
それも運が悪いのか良いのか、巫兎の見た目は男のような服装であり、髪型も短く美形な男で通らなくもない。
そんな巫兎を皆、男だと信じてしまい、結局巫兎は女であることを言い出せないままとなってしまっていた。
更に運が悪いことに、この事実に百子自身気づいていない。
だが、このことに百子が気づくのも時間の問題となっていたその時、新年大会なるものが南波刑務所で行われることとなり、その優勝した舎房には、何でも一つ願いを叶えてもらえるという権利が貰える。
そして、巫兎達3舎6房が優勝した訳なのだが、そんな私の願いはただ一つしかなかった。
「アンタ達、優勝商品は何にするか決まってるんでしょうね?」
「勿論ですよキジさん」
「私が欲しいモノはただ一つ」
「女性の下着(上)です」
「女性の下着(下)です」
「ダメに決まってんでしょ!!他のになさい!!」
そんな何時もの騒がしさの中、巫兎一人が何やら真剣な表情をしていた。
そんな巫兎に、アンタは決まってんのとキジに尋ねられ、勿論ですよと答えた後、巫兎はキジに頼み看守長に会わせてもらえることとなった。
「今回だけ特別よ!優勝商品を自分から看守長に伝えたいって言うから許可とってあげたんだから」
「はい。ありがとうございます、キジさん」
「で、アンタの欲しいモノってなんなわけ?まさか、あの二人と同じなんて言わないでしょうね!?」
「あはは、それは秘密です。でも、そんなモノ頼んだりしませんから安心してください」
巫兎の言葉に、ならいいけどと安堵するキジだが、そんなモノより巫兎は、叶えたい願いがある。
これだけは何としてでも叶えてもらはなければ困ることであり、これが叶わなければ新年大会で頑張ったかいがないというものだ。
新年大会では、ハニーとトロワ、そしてキジが百人一首で負けたものの、その他の競技は巫兎の活躍により全勝、結果、優勝を勝ち取ることができた。
それが全て無駄になるなんて考えたくもないが、新年大会の優勝商品は、何でも好きなものが一つ手にはいるのだ。
そう、何でも。
だからこそ、この機会を逃すわけにはいかなかった。