ナンバカ

□本命チョコのお相手は?
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バレンタイン前日、巫兎は周りの違和感に気づき始めていた。

3舎看守の巫兎は、南波刑務所で唯一の女看守であり、看守は勿論囚人も、ここには男しか存在しない。

唯一巫兎以外の女といえば、本部にいる看守長と、南波刑務所総合科学部長の御十義 飾、女性型看護師アンドロイドの神八くらいだ。



「あの、キジ主任」

「もぅ!何度も言ってるでしょ!アタシのことは、キジお姉さまと呼んでちょうだいって」

「えっと、キジお姉さま、最近皆の様子が可笑しいんですけど、何かあったんですか?」



3舎6房の囚人、囚人番号82番のハニー、同じく3舎6房、囚人番号3番のトロワが、最近いつも以上に巫兎に声を掛けてくる。

勿論それだけではなく、他の舎の囚人までもが巫兎を見かける度に、やたらと声を掛けてくるのだ。



「他の舎の看守まで様子が可笑しくて……」



何が可笑しいのかをキジに伝えようと話していると、キジは巫兎へと顔を近づけじっと見つめる。

近づいた距離に、巫兎が言葉を呑み込んでしまうと、本当にわからないのと、キジは巫兎に尋ねる。



「えっと……。何がでしょうか?」



首を傾げる巫兎に、キジはため息を1つ吐くと、今までの謎を解決する言葉を口にした。



「バレンタインよ!」

「……ああ!なるほど!」



ようやく皆の可笑しな行動の意味を理解した巫兎だが、バレンタインなどすっかり忘れていた巫兎は、なんの準備もしていない。

今日買って作ったとしても、南波刑務所にいる囚人や看守全員分など用意できるはずもなく、人数は少数にしなくてはならない。



「誰に渡そう……」

「なら、本命だけにしたらどう?」



ニコリと笑みを浮かべ提案するキジだが、巫兎の顔はみるみる赤く染まっていく。

本命と言われて思い浮かぶ相手は一人しかおらず、勿論キジはその相手が誰なのかわかっていてこんな提案をしている。



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