ナンバカ

□宛先は誰にも知れず
1ページ/6ページ



今日も5舎は平和、と思いきや、5舎の看守である猪里と悟空がある一枚の紙を険しい表情を浮かべ見つめていた。



「おい、これって……」

「間違いなくラブレターってやつッスね」



看守室にて、巫兎が落としていった一枚の紙、そこには、いつも側にいてくれて、支えてくれてありがとう、恥ずかしくて言えなかったけど、大好きだよと書かれている。

だが、相手の名前は何処にも書かれておらず、巫兎が好きな男が誰なのかはわからない。



「あーっ!!巫兎の好きな奴って誰なんだー!!」

「キーキー騒いだところでどうしようもないし、本人に聞くのがいいんじゃないんスか?」

「あ?ならお前が聞いてこい!」

「俺はパスで」



巫兎の好きな男が誰なのか気になるものの、二人には聞く勇気がなく、しばらく紙とのにらめっこは続いた。

好きな女に好きな人がいると知っただけでもショックは大きいが、その相手を知ったところでどうしようもなく、逆に何故そんなことを聞くのかと巫兎に怪しまれかねない。

運が悪ければ、自分の気持ちが巫兎に知られてしまうかもしれないというリスクもある。

そんなことを考えていた二人の元に、巡回を終えた巫兎が戻ってくると、猪里と悟空は慌てて何事もないふりをする。



「えーと……あ!あったあった」



そう言いながら巫兎はあの紙を手にすると、そっと自分のデスクの引き出しに仕舞い、休憩室へと行ってしまう。

巫兎が行ったことを確認すると、二人はほっと胸を撫で下ろすが、まだ問題は残っている。



「やっぱ猪里、お前が聞いてこい」

「イヤッスよ!俺の気持ちが巫兎に知られたらどうするんスか!?」

「その時は潔く散ってこい」



この瞬間、悟空が猿ではなく鬼に見えた瞬間だった。

だがその時、猪里はいいことを閃き悟空に提案する。

それは、囚人に頼んで巫兎から聞き出してもらうという方法だ。

最初は、囚人に頼むなんてと悟空は納得しなかったが、考えても他にいい案がでず、渋々ながら囚人に頼むことになったわけだが、その相手に選ばれたのは5舎8房だ。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ