ナンバカ

□腕の中で咲く桜
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桜の花が咲く季節がやって来ても、南波刑務所にいる囚人達にとってはただ春になっただけという感覚だった。

だが、そんな南波刑務所13舎13房には、桜はなくとも春がやって来たのだ。



「今日から13舎看守になった巫兎だ。お前達の噂は聞いているぞ」



いきなり房の扉を勢いよく開け中に入ってきたのは、美しくありながら凛とした、女の看守だった。

囚人4人の視線は巫兎の釘付けとなっていると、遅れて13舎主任看守部長の双六 一が現れた。



「ハジメちゃん!!この綺麗な女の人が新しい13舎の看守って本当なの!?」

「ああ。とはいっても、巫兎は本部で働くことを希望してるからな、一週間の間だけ13舎で預かっただけだ」



何故本部を希望しているのに13舎で預かる必要があるのかと皆思ったが、それに関しては本人がいると話しづらいのか、ハジメは何も話しはしない。

だが、囚人達にとって理由などはどうでもいいことであり、初の女看守にメロメロといった様子だ。

興味がないといった様子のジューゴでさえ、顔を逸らしながらも横目で見て気にしている。



「それじゃあ、点呼をとらせてもらう。番号を呼ばれた者は返事をしろ」



凛とした声で番号が呼ばれ、それにつられるように囚人達も真面目に返事をする。



「よし!4名の囚人問題なくいるな」

「んじゃ、看守室に戻って作業の続きをするぞ」



巫兎とハジメが行ってしまうと、先程までの空気が一瞬にして何時もの柔らかなものへと戻る。

一気に緊張が解けた囚人達の体からは力が抜け、巫兎の話題で持ちきりとなった。


巫兎の噂は他の舎にもあっという間に広がり、この日の娯楽室では巫兎の話題が話された。

そして、その噂の元となっている人物が今日の娯楽室の監視役であり、先程から壁際に立ち囚人達に視線を向けている。



「お嬢さん、初めまして。3舎6房、82番のハニーです」

「僕も同じく、3舎6房、3番のトロワです」



早速、3舎囚人の二人が巫兎に手を出し始めたため、それを13舎は止めにいく。

だが、どうやら巫兎の魅力はこの場にいる全員が感じたらしく、皆が巫兎の周りに集まり出す。



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