ナンバカ
□その背は大きく暖かい
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5舎主任看守悟空 猿鬼は、武の道に長けており、そんな猿鬼は周りにも影響を与えるほどの凄い人だ。
そんな5舎に新人の看守が入って来ることになったのだが、いざ当日になってみると、5舎にやって来たのは女の看守だった。
それも、鍛練の5舎と呼ばれるこの舎には似合わないほど非力に見える。
肌は色白、腕など触れただけで折れてしまうのではないかというくらい細く、流石の猿鬼も険しい表情を浮かべてしまう。
「………ら………なった…………す……」
「もっと大きな声で話せ」
「は、はい!えっと……今日から、5舎に配属になりました……巫兎です……」
先程から一度も猿鬼と目を合わすことなく挨拶をする巫兎に、猿鬼の表情は更に険しさを増していく。
それから猿鬼に連れられ巫兎がやって来たのは演習場であり、そこには囚人の姿がある。
そして、5舎にやって来て早々に巫兎は、囚人達の組手の相手をするように猿鬼に言われてしまう。
「私が組手の相手を、ですか……?」
何故猿鬼は、新人に囚人達の組手の相手をさせるのか。
それは、5舎に来るほどの実力者なら、この組手でその力を見ておきたいと思ったのだ。
そんな最初の仕事におどおどとする巫兎だったが、わかりましたと頷くと、最初の囚人の相手をする。
だが、その実力は開始早々にわかってしまうことになった。
巫兎は囚人の突き1つでその場で尻餅をつき、よろよろと立ち上がるとその後もそんな状態が繰り返され、組手の相手にすらなっていない。
猿鬼の予想の遥か下となった結果に、驚いたのは猿鬼だけでなく囚人達もだ。
5舎で弱い看守が来るなど今までにはないことであり、囚人達は驚くと同時に女の看守に喜んでいた。
「すみません……。主任に頼まれた最初の仕事なのに……」
そんな落ち込む巫兎に猿鬼は背を向け歩き出す。
やはり失望されてしまったのだろうと、俯く巫兎の耳に猿鬼の声が届く。