ナンバカ
□二つの理由に己を鍛え
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この日、5舎囚人、囚人番号2番のリャンは、新しい看守が来ることを楽しみにしていた。
鍛練の5舎と呼ばれるこの5舎に配属となる看守、つまりは強いということであり、鍛練が好きなリャンにとっては、新しい組手の相手が増えるということになる。
今までリャンの相手をしていたのは、5舎主任看守の悟空 猿門だけだった。
他の看守や囚人とも手合わせをしたことはあるものの、猿門以上の相手、もしくは猿門と同じくらいの強さを持つ者は5舎には存在しない。
「リャン、少し落ち着いたらどうですか」
「ああ」
先程から落ち着きのないリャンに、同じ8房の囚人である囚人番号58番のウパが声をかける。
「やっぱ変わってるよなぁ。女なら兎も角、どうせ男の看守だろうし、何がそんなに楽しみなんだかねぇ」
房の隅で寝転がりながら本を読んでいる囚人、囚人番号71番のチィーが口を開く。
「貴様と一緒にするな!!女より男の方のがいいに決まっている」
「まぁ、リャンの相手になるような人といえばそうでしょうね」
新人看守のことで3人が話していると、ガチャンという音を響かせ房の鍵が開く。
3人の視線が扉へと向けられると、そこには猿門の姿があり、リャンは猿門へと近づくと、瞳を輝かせながら新人看守はどこかと尋ねる。
「それならそこに居んだろ」
「そこ……?」
猿門の視線の先を辿ると、猿門のすぐ横には、背の低い女音姿があった。
その女は看守服を纏っており、囚人3人は直ぐに理解した。
この小さな女こそ、今日から5舎に配属になった新人看守なのだと。
「コイツが今日から5舎に配属にな」
「ちょっとアナタ!!」
女は猿門が紹介しようとしていたのを遮ると、リャンを睨み付けている。
アナタというのはもしかしなくてもリャンのことであり、リャンはなんでしょうかと返事を返す。
「今私のことわざと無視したでしょ!?」
「いや、そういうわけでは……。ただ小さくて気づかなかっただけだ」
小さくてとリャンが口にした瞬間、突然リャンの背中に痛みが走る。
リャンの目の前には天井が見え、床に背中がついていることを確認すると、どうやら床に叩きつけられたのだとわかる。
一体誰がなど考えなくても直ぐにわかる、天井と一緒に視界に映る女の顔が目に入れば。
「私は小さくない!!アナタくらい簡単に投げ飛ばせるんだから」
ドヤ顔をする女だったが、女の頭上に拳が落とされ、女は頭を押さえる。