ナンバカ

□いなくなって縮んだ距離
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13舎13房では、今日も騒がしい朝を迎えていた。


朝から13房囚人は脱獄するが、呆気なくハジメに捕まり房へと戻されてしまう。

何時ものことなのだが、今日は少し違っていた。



「あーあ、また捕まっちゃったね」

「もっと逃げ切れると思ったんだけどなぁ」



皆が話す中、巫兎は黙ったまま一言も声を出さない。

脱獄をする時も、今日の巫兎は元気がないように見えた。



「巫兎ちゃん、どうかし、っ!?巫兎ちゃん!?巫兎ちゃん!!」



突然倒れてしまった巫兎に皆驚き看守を呼ぶと、巫兎は風邪であることが判明した。

心配する皆だったが、巫兎が大好きなニコは元気をなくしてしまう。



「巫兎ちゃん、大丈夫かな……」

「んなの平気だって!風邪なんて2、3日で治っちまうって」

「まぁ、今俺らにできることは、巫兎が戻ってくるのを待つくらいだしな。ニコが元気ねぇと、巫兎が戻ってきた時に心配するんじゃねぇか?」

「メシだメシ!!メシ食や元気出んぞ」



元気づけようとする皆の言葉に、ニコは伏せていた顔を上げると笑みを浮かべ頷く。

だが、それから一週間経っても、巫兎が房に戻ることはなく、風邪にしては治りが遅いため、点呼を取りに来たハジメに皆が巫兎のことを聞く。



「ああ、アイツは新型の病気みてぇだからな、しばらくは戻らねーぞ」

「ハジメちゃん、それってどういうこと!?」



新型の病気、それはつまりどんな病気なのかも、治す薬すらも見つかっていないということであり、今現在治療薬を探している最中ということだ。

あれから調べてはいるようだが、まだ治す薬は発見されておらず、巫兎は今、高熱に魘されていた。



「僕、巫兎ちゃんのお見舞いに行く!!」

「俺らも行くぜ!」

「だな」

「シロの作った食いもんでも持ってってやるか!」



お見舞いに行こうと騒ぐ4人だが、そんな4人の耳にハジメの声が届く。

それは、お見舞いに行くことはできないというものだ。



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