ナンバカ
□絆で結ばれて
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5舎8房では、今まさに桜の話で盛り上がっていた。
囚人番号2番、リャン。
囚人番号58番、ウパ。
囚人番号82番、チィー。
この3人はチャイニーズ出身なのだが、その中に一人だけジャパニーズがいた。
囚人番号211番の巫兎だ。
そんな巫兎の、桜の季節だなぁという言葉に皆が食いついたのだ。
桜というものを聞いたことはあるものの、実物は見たことがなく、3人は興味を示している。
そんは中、いつものように鍛練のため演習場へ行くと、3人は何やら5舎の主任看守である悟空 猿門(ごくう さもん)と何やら話しているようだ。
近づいていき何を話しているのか尋ねると、桜のことだ、とリャンが言う。
「ダメなもんはダメだ」
「いいんじゃない、刑務所の中に桜の木一本くらいさぁ」
チィーもいつになく粘るが、猿門の答えは変わらない。
だが、猿門が頷かないのも無理はない。
いくらなんでも桜の木を刑務所に持ってくるなど不可能であり、そんな許可もでるはずがないのだから。
自分が桜の話なんてしたから皆桜が見たくなってしまったのだと思い、これ以上猿門に迷惑をかけないために、巫兎は3人に諦めよと声をかける。
それよりも今は鍛練の時間。
リャンとウパ、そして鍛練を何時もサボるチィーを桜の話から遠ざけるため、鍛練に引っ張り込む。
去り際に、猿門にだけ聞こえる声で、すみませんでしたと巫兎は謝ると4人グラウンドを走る。
鍛練が終わった頃には3人とも桜のことは忘れてくれたらしく、その後、桜の話がでることはなく、巫兎も桜の話題は避けるようにした。
それから数日が経ち、今日も鍛練のために演習場に来ていた巫兎達だったが、今日は13舎13房の囚人。
囚人番号15番、ジューゴ。
囚人番号11番、ウノ。
囚人番号69番、ロック。
囚人番号25番、ニコ。
この4人と合同での鍛練となる。
こうして時々13房の囚人達とは鍛練をしているため面識もあり、休憩中には会話もしたりといつも以上に賑わう。