ナンバカ
□アナタと一緒なら
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ここ、南波刑務所には、看守同士で恋に落ちた者がいた。
3舎看守の五浄 流河、同じく3舎看守の巫兎は、刑務所内では皆が知るカップルだ。
「流河さん、あの……」
「なんだい?用があるならグズグズしてないで早くお言いよ」
流河に聞きたいことがある巫兎だが、躊躇ってしまいなかなか口に出せない。
そんな巫兎に、まだアタイは仕事があるからと、流河は行ってしまう。
「はぁ……。また聞けなかった……」
巫兎が流河に聞きたかったこと、それは、巫兎と流河は本当に恋人なのかだ。
付き合う前も付き合った後も、何も変わらない二人の関係。
それが、巫兎を不安にさせていた。
二人が一緒にいるのは仕事の時のみであり、プライベートで会うこともなく、勿論恋人らしくデートもしたことがない。
「流河さん、私のこと本当に好きなのかな……」
「好きに決まってんじゃない」
突然声が聞こえ振り返ると、そこには、いつからいたのか3舎看守の三葉 キジの姿がある。
キジはこう言ってはいるが、巫兎にとって流河の気持ちがわからないことが何より不安なのだ。
「そんなに不安なら、直接聞いちゃいなさいよ」
「そうなんですけど……」
流河の気持ちを知るのが怖く、なかなか聞くことができない巫兎はこの不安を持ち続けるしかない。
表情が暗くなってしまう巫兎に、キジは、なら巫兎から積極的にしてみたらと提案する。
「私から、ですか?」
「そう!デートに誘って二人で出掛けてみれば、流河が巫兎のことを想ってる事がわかるわよ」
一緒に過ごす時間があれば、気持ちがわかるというキジの言葉で巫兎は考える。
今まで一緒の時間を作ろうとしなかったのは、流河だけでなく自分もであり、気持ちを知るために流河をデートに誘う決心をする。
だが、決心をしたものの、自分からデートに誘うなんて簡単にできるはずもなく、気づけば休憩時間になってしまっていた。