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「ねえ、こんのすけ」

「はい、審神者様」

「なんかこう、審神者同士の婚活パーティー的なのとかって、ない?」

「ありますよ」

「まじで!?」

思わず仕事の手を止めてこんのすけを勢いよく見やる。

「前回の参加者のプロフィールでしたら閲覧できますが、ご覧になられますか?」

「見る見る!」

わくわくしながらこんのすけが見せてくれるプロフィールに目を通してみた。
なんというか、あれだ。
演練のときから薄々感じてはいたが、審神者は女性の比率が高い。
必然的に良い男の競争率も高くなる。
そうなると売れ残り、つまり他の女性が見向きもしない男性たちになってくるわけで。

「…うん、せやな、現実ってそんなもんよな、うん」

会いたいと思えるような魅力的な男性にはとっくに良い女性がいるのだ。
知ってた。私知ってた。現実ってそんなもん。
審神者で相手探すのが難しいってなると一般人かあ。
一般人でこの仕事理解してくれる人が見つかればいいんだけど、特殊な職業だしなあ。
でもなあ、子供欲しいからなあ、結婚はしたいんだよなあ。
結婚式とか新婚旅行とかそういう華々しいことにはそこまで執着はないんだけど、子供は欲しいんだよなあ。
待って、もしかして私“結婚したい”んじゃなくて“子供欲しい”ってことなのでは?
そういえば神話とかで人間と神様のハーフとかいるよね。
じゃあ付喪神と人間でも子供作れたりするんだろうか。

「こんのすけ」

「はい、審神者様」

「刀剣男士と審神者って子供作れるの?」

「はい、過去にそういった事例もあります」

「まじで!?」

神は我を見離してはいなかった!
テンション上がりすぎて思わず天を仰いだ。
いや、だって、刀剣男士ってイケメン揃いじゃん。
あの中から選び放題なわけでしょ?
そりゃテンションも上がるっしょ。
いやでも私には心に決めた人が…
両手で顔を覆い天を仰いだままでいると、襖の向こうから声が掛かる。

「長谷部です、報告に参りました」

ちょうどいいタイミングでの思い人の登場に、胸が高鳴り背筋が伸びる。

「入って」

「失礼します」

「ちょうどよかった。長谷部に相談したいことがあるの」

こちらをまじまじと見つめて、相談ですか、と聞き返してくる仕草に思わず胸がきゅんと甘く締め付けられる。
イケメンなんだけど忠犬で可愛くて母性本能くすぐられて本当に長谷部ってずるい。

「結婚しよう」

「は、」

「結婚しよう、長谷部」

いつもの凛々しい表情から一変してぽかんと口を開けてるのもすごく可愛い。キュンキュンする。

「人間と刀剣男士の間に子供作れるらしいし問題ないよ」

「その、俺と、主が、ですか」

「そう」

「それは、その、」

長谷部が珍しく言いにくそうに口籠る。
視線を下の方に向けてうろうろと彷徨わせている。
唇を引き結んで、意を決したように顔を上げた。
視線がかち合う。

「俺で、よろしいのでしょうか」

「長谷部がいいんだよ」

そう言うと、長谷部は顔を赤くして口元に手を当てて視線を彷徨わせる。
何だその初々しい反応は。可愛いか。

「その、主はいつも仕事に熱心に取り組んでおられるので、そのような俗世間的な考えを持たれていらっしゃるとは、思ってもみませんでした、」

「仕事は仕事でこれはこれだよねー。大丈夫。ちゃんと仕事とプライベートは分けるから安心して」

そう言ってにっこりと長谷部に笑顔を向けると瞠目して唾を吞む。

「長谷部はお仕事大好きだもんね。長谷部からお仕事を奪ったりはしないよ。今まで通りきちんと長谷部の上司頑張るからね。私に付き合うのは空いた時間でいいから」

「いえ、是非、この長谷部をお傍にお置き下さい。必ずや期待にお応えして見せましょう」

「ありがとう。じゃあ、これからは毎日一緒に寝よう」

「、は、え、」

耳まで真っ赤に染め上げてこちらを見上げる長谷部が可愛らしい。

「これからは今まで以上に頼りにしてるからね」

「っ!ご随意に」

長谷部が、スッと武士の構えできれいに畏まって跪く。
よし。言質をとったぞ。

これからこの、真っ直ぐで弄りがいのある可愛らしい長谷部をどういう風に手の平の上で転がしていくか。
考えを巡らせていると楽しくて仕事も捗りそうだ。




 
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