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□long
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新しく鍛刀したばかりの刀を持って廊下を歩く。
長さとしては打刀くらいだと思うけど、結構ずっしりとくる。
普段あまり重いものを持ったりしないから重く感じるのかもしれない。
誰かに運ぶのを手伝ってもらってもいいのだけど、なんとなくこれは人任せにしたくなくて自分でやっている。
廊下を曲がったところで山姥切に出くわした。
危ない。
もうちょっとで落とすところだった。

「これから顕現か?」

「そうなの。新しい子、どんな子か楽しみだね」

「…写しには飽きたか」

「えー、まさか。これからも頼りにしてるよ。山姥切隊長」

笑顔で山姥切にそう言うと、満更でもなさそうな顔をして視線を逸らす。

「…ふん、俺は敵を切る。それだけだ」



山姥切と別れたあと、しらばく歩いて顕現するための印を結んである部屋に来た。
印の中心に刀を置く。
なんとなく、部屋全体の空気がざわついた気がした。
目を閉じ意識を集中して、刀へと力を込める。

鈴のような澄んだ軽やかな音とともに桜が弾けるようなこの感覚。
いつもこの感覚を味わうたびに、新しい出会いに胸が高鳴る。
緊張で唾を吞んだ。
ゆっくりと目を開けると、菫色の衣服を身に纏った青年がそこに立っていた。
顕現したばかりでまだ意識がぼんやりしているかもしれない。
そう懸念して様子を窺ってみると、視線がぱちりと合った。
刀剣男士たちには視線の鋭い子たちが多いけど、この子もそうみたいだ。
相手の緊張を解すために、優しい笑顔を作って話しかける。



「おはよう。きみはなんていうお名前なの?」

「…俺、俺は、へし切長谷部と申します」




 


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