* 長編 キミだから好きなんだ【完】

□キミだから好きなんだ4
4ページ/5ページ





 バシンッ


 『最っ低!』

 「っ、…ハァ…これで気が済んだか?」

 『アンタなんかもう顔も見たくない!』


昨晩酒に溺れて関係を持ってしまった女から

付き合ってほしいと言われた。

この子が前からあたしの事を好きなのは

なんとなく気づいていた。

でも彼女なんて作る気さらさらないあたしは

それを断ったのだ。



大学生になってからのあたしは人が変わって

しまったかのようだと言われる。

そう言われても仕方ないと思ってる。

自分自身が一番よくわかってるし。

もう、ひとりの人を一途に想う事に疲れて

しまったのだ。

あんな辛い思いするくらいならもう、

誰も愛さないと決めたから。

でもさすがに最近は少し遊び過ぎかも

しれないな…



打たれた左頬をさすりながら家まで歩いて

いると、公園から話し声が聞こえてきた。



もう21時近いというのに人がいるなんて

珍しいなと思いながら公園を覗くと、

ブランコに乗っている少女に中年の男が

何やら話し掛けていた。

どことなく、少女が困ってるような…



助けに行くべきか迷っていると、

ブランコから立ち上がり歩き出した少女を

男が後ろから捕まえて公園の奥に連れて

行くではないか。

これは本気でヤバいやつだと思い、

助けに行こうとしたが、女であるあたしが

ひとりで助けに行ったところで本当に

助ける事ができるのか…

そこで思い付いたのが、さも警察官が

いるかのように演技することだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ