* 短編

□可愛いかよ
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teamMの公演が始まった。

舞台袖から観客席を覗くと、みんな百花の

最後の姿を目に焼き付けようとしてるのが

わかる。

それはメンバーも同じだ。

メンバーにとっても百花はすごく大きな

存在だから。

控え室に戻り、百合劇場の台本を頭に

入れる。

最後の最後に百合劇場だなんてだいぶ

ふざけてるけど、やるからにはしっかり

やりきりたい。

でも今日のあたしは変だ。

大したセリフの量でもないのに全く頭に

入らない。

台本をひとり読んでいると、夢莉が戻って

きた。

彩「夢莉。一緒に練習してくれへん?」


夢『…いいですけど』


彩「ありがとう。じゃあここからね」






彩「ゆーり。ごめんって。拗ねんなよ」

夢『いっつもそう!』バシッ

夢『都合のいい時だけ優しくして…
人の気持ち考えたことあんの?』

彩「ごめんやん。あたしが悪かったからさ」

ぎゅっ


彩「・・・」



夢『あの…彩さん?セリフ忘れちゃいました?』


彩「・・・」


夢『彩さん?』


彩「…夢莉。最近なんであたしの事避けてるん?」


夢『えっ?…別に避けてなんか…』


彩「避けてるやん。全然あたしの所に来てくれへんしさ。なんでなん?」


こんな気持ちのままじゃ仕事なんて

できない。

ずっと思ってたことを一度口にしたら

止まらなくなった。


彩「目があってもそらすし…寂しかったんやから…」


夢『あの…とりあえず誰かに見られるといけないから離して』


彩「離さへん。絶対」




夢『もう…困らせないでくださいよ。そんなに寂しかったんですか?』


彩「話し掛けてもすぐどっか行くし。嫌われたんかなって不安になるやん…」


夢『フフッもう…可愛いかよ』


彩「なんやねん!人が真剣に悩んでるのに」


夢『これじゃあ百合劇場と立場逆転ですね』


彩「ほんまやな…」


夢『寂しい思いさせてごめんね?』


彩「あたしのこと嫌いになってない?」


夢『当たり前じゃないですか』


彩「それじゃあ仲直りのちゅーして?」


夢『それはイヤ』


彩「なんでやねん!」



相変わらずツンやけど夢莉に嫌われた

わけじゃないことがわかってよかった。

よし!百合劇場やったんで!
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