* 長編 キミだから好きなんだ【完】
□キミだから好きなんだ5
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「今日は月が真ん丸やなぁ…」
外に出てから特にすることがなくて夜空を
見上げた。
自分が夢莉ちゃんくらいの時も親とよく
ケンカしたな…
その時の母の口癖は、
"彩の為を思って言ってるんやで!"
だった。
大人になった今は叱ってくれた事に
感謝してるけど、あの頃のあたしは
そう思えなかったんだよな…
夢莉ちゃんと昔の自分を重ねていた。
外に出てから15分くらい経っただろうか。
上着は一応着てきたものの、今夜はまあまあ
風が強くてけっこう冷える。
もうそろそろ入っても大丈夫かなと玄関の
ドアを少し開け様子を見ると、
"私なんて生まれてこなければよかったんだ!"
泣きながら怒鳴っている声が聞こえてきて、
その声があまりにもつらそうで
耳を塞ぎたくなった。
キミが抱えているものは、
あたしが思っていたような
生ぬるいものではなかった。
14歳の少女にとってその真実は
どれ程の痛みに感じたのだろう。