* 短編
□snowflake
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皆さん、最近疲れてませんか?
この国をなぜか勝手に全国ツアーしてる
迷惑なウイルスに振り回されて、
もううんざりしちゃいますよね。
これからどんどん不景気になるみたいだし、
私達これからどうなっちゃうのかな…
こんなお先真っ暗な世の中だけど、
ちょっとだけ面白い話があるんですよ。
暇つぶしにでも聞いてくれませんか?
あたしが体験した、
まるでおとぎ話のような、
世にも不思議なお話。
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あたしには沢山の夢がある。
ペロペロ…
ママ『フフッw ほんま美味そうに食べるなぁ。』
毎日好きな物を食べて、
マ『あらあら、今日も甘えん坊の日なん? よしよし〜綺麗な毛並みやねぇ』
大好きなママに沢山甘えたり、
マ『天気もええし、ここで日向ぼっこしていくか?』
眠たくなったらこうしてぽかぽかと温かな陽を浴びながら眠る。
ここまでは有難い事に望み通り叶っている
幸せ者なあたし。
でも、
一番肝心な夢はまだ叶ってなくて、
残念ながら叶えられそうもないらしい。
どうしてそう思うかというと、
物知りな友達がそう教えてくれたから。
タン…タン…タン…
ハッ、この階段を降りてくる足音と匂いは…
『ふわぁぁ……おはよ…』
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!
アァァァァー今日も可愛いぃぃ♡
こんな時間まで寝てたのにまだ眠たそうに目を擦ってるところも可愛いぃぃ♡
マ『大きなあくびして何がおはよやねん。今何時かわかってんの?』
『…15時…』
マ『おやつの時間に起きてくるアホがどこに居んねん。どうせまた夜更かししとったんやろ。ちゃんと規則正しい生活せなアカン言うてるやろ?』
『ハァ…別にええやん、学校休みやねんからさ…顔洗って来る』
どうしてなのかわからないけどママとこの子は毎日こんな風に言い合いをしてる。あたしは二人の事が大好きだから仲良くしてほしいのになぁなんて思ってるんだけど…浮かない顔をしたまま寝癖のついた頭を掻いた後どこかに行ってしまった女の子の背中をママは呆れたような顔をして見てた。
あの子の名前は夢莉ちゃん。
私より背がとても高くてママより髪の毛が短い、とっても可愛い女の子なんだ。
高校というところに通ってるんやって。
実はね…ここだけの話やけど、、
あたしが密かに想いを寄せてる女の子やねん。
誰にも言ったらアカンよ?
いつもは高校に行っててなかなか会えないけど今は春休みという時期らしくてしばらくお休みなんやって。だから夢莉ちゃんは毎日家に居て、あたしからしたらとても嬉しい事だけどお昼ご飯を作るのが大変だとママはボヤいてた。
『ママ、お腹空いたんやけど…って、またそいつ居るん』
マ『そいつとはなんや。この子には"サヤカ"って名前がちゃんとあんねんで?』
『どうでもいいよそんなの…それより家ん中絶対入れんといてな、痒くなるから』
マ『縁側までしか入れへんから大丈夫やって。それに仕方ないやん、毎日こうして家に来るんやもん。なぁサヤカ♡アンタはほんま美人さんよなぁ綺麗な毛並みしてるしとても野良には見えへん…でも首輪してへんから野良やろなぁ』
おっしゃる通り。
あたしはれっきとした野良です。
ママはあたしに優しく微笑みながら頭や顎を撫でてくれて、あまりの気持ち良さにゴロゴロと喉が鳴ってしまう。
あたしの名前はサヤカ。
行く場所によって色んな名前があるけれど、ママがつけてくれたこの名前の響きがとても可愛くて一番気に入っている。
そういえばこの前物知りな友達から聞いた話だけど、どうやらママと夢莉ちゃんは猫ではないらしい。
" 人間 "
という、あたしとは別の生き物なんだって。
マ『夢莉、ママそろそろ買い物行ってくるから留守番しとってな』
『え、でもあの猫どうするん?まだ縁側に居るけど…』
マ『まぁ、その内どっか行くんちゃう?』
『いや、せめて外に出してから買い物行ってや!家の中入って来たらどうすんの?』
マ『そんな心配せえへんでも大丈夫やって〜サヤカは賢いから家の中には入ってこんよ。それに、元はと言えばアンタに引っ付いてきた猫やろ?たまには相手したってや。』
『そんなん言われても触られへんのにどうしたらええの?』
マ『あ、もうこんな時間や!とりあえずその内どっか行くと思うから、それじゃ行ってきまーす!』
『っ、ちょっとママ?!、、本当に行っちゃったよ…』
夢莉ちゃんはあたしの事があまり好きじゃないみたい。だって全然近くに来ないし、ママみたいに撫でてくれないから…もっと仲良くなりたいのにな…どうしたら仲良くなれるかな?
『・・・』
「・・・」
少し離れた場所から縁側にいる私を困ったような顔して見てる夢莉ちゃん。
「ニャー(ねぇ、彼女)」
『・・・』
「ニャー(遊ぼうやー)」
こうして話し掛けてみるけど、人間のこの子にはあたしの言葉はわからないみたい。なんだか少し悲しい気持ちになる。
夢莉ちゃんはいつも離れた所に居るからあたしはただその姿を大人しく見つめてる。本当はあたしから突撃したいところなんだけど、ママがここまでしか入っちゃダメだと言ったからこれ以上近づく事はできないし…
今日もまたこの距離感かぁ…寂しいけど仕方ない。こうして眺められるだけで嬉しいしね。
なんて自分に言い聞かせていた時、
有り得ない出来事が起こった。
『…どうしたの?』
え、、嘘、、
いつもは近づいて来ない夢莉ちゃんがなぜか今、こんな近くまで来てくれてあたしに話し掛けてくれてる、、
どうしてなのか全くわからないけど、とにかくとてつもなくめちゃくちゃ嬉しくて大興奮してしまったあたしは、
「ニャー!ニャー!ニャー!(どうしたの?!何で来てくれたの??え、遊ぶの??)」
テンションMAXになってとにかくずーっとしゃべり続けた。
すると、
『うるさっ…何でこんな鳴くんやろ…』
「っ、ニャー…(あ、ごめんなさい…)」
つい沢山話し過ぎて驚かせちゃったみたい… だってすっごく嬉しかったから…でもちょっと黙ろうかな…
『もしかしてお腹空いたとか?』
「(そうでもないで。さっきママからおやつ貰ったし。)」
『仕方ないなぁ…ママには内緒だからね?』
「(?)」
立ち上がり歩いて行った夢莉ちゃんは家の中にあるママがいつもおやつを入れてるカゴに手を入れて、
「っ、ニャ!ニャー!ニャー!(え、ちゅーる?!食べる食べる!大好き!)」
大好物のちゅーるというおやつを持ってこちらに戻って来たではありませんか!!ヤッターーー!!
『うおっ、待って!飛び付くな!w』
「…(はい)」
「、、よし、どうぞ。」
ペロペロ…
おいしーーー!!
何でこんなにおいしいの〜幸せ〜♡
本当はあまりお腹空いてなかったけど大好きなちゅーるは別腹だ。
『ハハッw 凄い食べっぷりやな。これ、そんなにおいしいの?』
夢中になって食べ続けていると頭上から笑い声が聞こえて、目だけ見上げてみるとなぜか夢莉ちゃんは笑っていた。どうして笑ってるんだろう?理由はわからないけどこの優しい笑顔、ママとよく似てる。
あたしはこの笑顔がとても好きだなと思う。
クンクン…
そしてこの子の匂いもとても好き。
マタタビとは全然違うけど、
ずっと嗅いでいたいようないい匂い。
ずっと一緒に居たいなぁ…
でも、、
『あ、、行っちゃった…』
テクテク…
食べ終わってからすぐ外へ出てきた。
本当はもう少しあの場に居たかったけど、あたしがいつまでも居ると夢莉ちゃんはいつも体を掻きながら困ったような顔をするから。どうやらあたしを触ったり同じ空間にいたりすると体が痒くなってしまうらしい。
あたしには夢がある。
あの子ともっと仲良くなりたいという夢。
ちゃんと人間に伝わる言葉で話したり
沢山遊んでみたりすればきっと絶対
もっともっと仲良くなれると思うんだ。
だからあたしは、人間になりたい。