* 長編 love triangle

□love triangle17
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side sayaka



シャワシャワシャワ…


今日も元気にクマゼミが大合唱している。

7月下旬ともなるとどこにいても嫌でも

聞こえてくるセミの声。

こんなにうるさいのに周りの樹木を

見渡してもあまり姿は見えない。

きっと自然の保護色に身を隠しているの

だろう。



梅雨が明け、一気に気温が上昇した。

太陽の日差しがあたしの素肌をジリジリと

焦がすほど強力で、まさに夏本番といった

感じの季節になった。


今日は花壇の水やり当番で約1週間ぶりに

学校へ登校している。

美化委員は夏休みの間、一人につき3日間

この当番を持ち回りするのだ。


 「ハァ…ハァ…」


夏休み1日目から熱を出し寝込んでいた

病み上がりのこの体にはいつも以上に

このすごい傾斜の坂は堪える…

そして半端なく流れ落ちてくる汗のせいで

前髪が額にへばり付くのが鬱陶しくなる。



倉庫からホースを取りだし花壇まで運んで

行く。

このホースはなかなか重たくて花壇まで

運ぶのがひと苦労だ。

なぜ花壇の近くに倉庫を作ってくれなかった

のだろうと誰もが思ってると思う。



ザザーーッ


ノズルを握って散水を始める。

我が校の花壇は無駄に大きいだけあって、

色々な花が植えられている。

サルビア、ペチュニア、アメリカンブルー、

マリーゴールド、ガザニア、アフリカ

ホウセンカなど。

植えられてる花の近くには花の名前と

花言葉が書かれたプレートが土に刺して

ある。

これはこの花壇に少しでも興味を持って

貰いたいからと吉田先生が作成した。

でも、実際のところこのプレートを見て

くれるほど花に興味を持つ生徒なんて

あまり居ない気がする。





夢『山本さん、マリーゴールドの花言葉はな〜んだ♪』


 「えっ…うーん、マリーゴールドかぁ…元気とか?」


夢『ブブーッ、全然違う。正解は、嫉妬・絶望・悲しみでした〜』


 「そんなん知ってる訳ないやんw 」


夢莉と1週間当番をしていた時、

いきなり始まった花言葉当てクイズ。

当たり前だけど一問も正解する事は

できなかった。


ザザーーーッ


 「あっ、虹や」


散水をしていると自然と虹が出現していた。

そういえば、夢莉を喜ばせたくてノズルを

空に向けて見事出現した虹を見せたら

怒られたんだよな。


 「…」


今日の当番はなんだかつまらない。

それに今、一人きりで活動している事が

なぜか妙に心細く感じてしまう。

ここに夢莉がいないからかな…

そんなあたしは夢莉が言った言葉や笑った

顔を思い出しながら、今日の活動を終えた。
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