* 中編 約束の向こう側

□約束の向こう側 第3話
1ページ/4ページ


side yuuri




10月17日



こんなにも幸せな朝を迎えた事なんて

なかった。




少しだけひんやりとした空気を感じた朝。

ふと目が覚めた時、一番最初に映ったのは

優しく微笑みながら私の頭を撫でる

大好きな人だった。



彩『おはよ。夢莉』


 「っ、、お、おはようございます…」


彩『フフッw どうしたん?顔真っ赤やで?』


だって…すごく恥ずかしくて…

彩さんの綺麗な顔がすぐ近くにあるし、

今、私も彩さんも裸のままベッドの中にいて

昨日の出来事を一気に思い出してしまった。



彩『よく眠れた?』


 「はい…」


彩『そっか。よかった』


昨晩はあのまま寝てしまったのか…

朝まで一度も目を覚まさずにぐっすり

寝たのはいつぶりだろう?

最近は眠れない日が続いていたから。



彩さんの瞳を見ていると、その中に

自分の顔が映っているのを見つけて、

なんだか不思議で面白い。

そして、外から注ぐ白い光がこの綺麗な

瞳をよりキラキラと輝かせていて、

ほんとに綺麗だなぁなんて思いながら

見惚れていると、



彩『今日から夢莉はあたしの彼女ね』


 「は?、あっ…、えっ?、、」


突然すぎて頭が着いていけてない…


私が、、彩さんの彼女?



彩『だってあたしは夢莉が好きで、夢莉もあたしが好きやろ?めでたく両想いやな』


そう言って幸せそうに微笑む彩さん。

なんだか信じられなくて、夢なんじゃ

ないかと思えてくる。

本当に現実なのか自信が持てなくて

自分の頬をつねって確認してみたら

ちゃんと痛かった。


彩『あはっw 突然何してんねんw』


 「夢かもしれないと思って…」


彩さんはニコニコ笑いながらずっと

私の頭を撫でたり頬をつんつんしたり

してる。

柔らかくて穏やかな顔をしてる彩さん。

仕事の時とは違う表情を向けられ、

幸せを感じて自然と頬が緩んでくる。



ベッドの中でこんな緩やかな時間を

共にしたのは初めてだった。

お互いの体温で暖かくなった布団に

二人の体は包まれていて、その温かさが

とても心地よくて気持ち良い。

なんか、、

だんだん瞼が重たくなってきたような…



彩『夢莉?まだ眠たい?』


 「っ、、いえ、眠くないです」


彩『嘘つけw 本当は眠いんやろ?はい、おいで』


そう言って笑いながら腕を広げてくれた。

普段、人に甘えたりする事が出来ない

私にとって、素直にこの腕の中に飛び

込む事はめちゃくちゃ恥ずかしくて

相当勇気がいることだ。

でも、今日の私は浮かれてるのか

ネジがいくつか外れてしまったらしい。

この緩やかな時の流れに身を任せて、

優しい眼差しの彩さんに甘えてみたくなって

気づいたらゆっくりとその腕の中に

吸い込まれてた。


すると彩さんは私をぎゅっと抱きしめて

背中を優しくトントンしてくれてる。

彩さんの柔らかなぬくもりと、

大好きな匂いに包まれて、すごく落ち着く…


例えて言うなら、

『昔からいる大切なぬいぐるみ』と

一緒に眠っているような心が穏やかに

なっていくような感覚。



 「彩さんは温かいね…」


彩『確かに体温高めかも』


温かいのは体温だけじゃないよ。

彩さんは心もとっても温かいんだ。

ずっとこうしていたい。

心の底からそう思った。


彩『なんかあたしまで眠くなってきたな…』


せっかく彩さんと一緒にいるのにまた

寝てしまうなんてもったいない気も

するけど、このまま眠りについても

いいかなとも思った。



彩『夢莉、おやすみ』


私の頭の中はあなたで一杯だから、

きっと夢の中でも会えるよね。


彩さんの小さな体からトクントクンとした

鼓動を感じながらそっと瞼を閉じた。


 「おやすみなさい…彩さん」


こんな日が来るなんて思ってなかった。

神様、、意地悪なんて思ってごめんなさい。

神様は私の事を見捨ててなんかなかった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ