リクエスト小説

□ヒーローは悪役になりたい〜前編〜
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ーーー過去ーーー



ここは鏡の国。

凶暴な王が支配する国だ。

死後、地獄へ落ちた者が時折ここに迷い込み、この王に魂を喰われる。

ある日突然、鏡の国と地獄の国の扉が繋がってしまった。

(魂が喰い放題。閻魔を閉じ込めれば地獄を支配することもできるかもしれない)

王はニヤリと笑い、地獄の扉を通った。

こうなると厄介なもので、王は“この世”に“あの世”の者を流出させることができるのだ。

(もしかして、死後だけでなく、生きている者の世の中も支配できるのか・・・?)

そうすれば魂は取れる、家来もできる、自分の好きに支配できるのだ。

(フハハ!愉快だ!少し地獄で遊んでやろう)

王は2番目に強い家来に地獄を支配させ、高みの見物をしていた。

が、そこへ2人の男が来た。

どうやら死後に天国でも地獄でもない、別の世界から来た者らしい。

(武道家か?)

1人は閻魔を助けているが、もう1人は家来と闘っている。

その闘っている姿を見て王は思った。

美しい、と。

(その男を私の元に連れてこい。妃として迎え入れよう)

しかし男は強かった。

このままでは負けてしまう。

(何をしている!奥の手を使え!気絶させて連れてこい!)

王からの命令を受けた家来は第2形態へと姿を変えた。

男はそれに敵わない様子だ。

血の池に落ち、閉じ込められた。

(よし)

これは勝てる。

そう王が確信した時だ。

バキィ!!!

家来の顔に蹴りが入った。

(もう1人の奴か!?)

いや、違う。

(誰だ、あの男は)

新たな敵が立ちはだかった。

どうやら妃にしようとしている男を助けに来たらしい。

さらにこの2人。

「何をしている」

「だってあいつめちゃくちゃ強ぇんだもん」

「そうではない。なぜ俺を呼ばなかった」

「へ?」

「愛している貴様を助けるくらいさせろ」

「!へへっ////」

どうやら恋仲のようだ。

(許さん。奴は必ず私の妃にする)

しかし恋仲の2人は家来を倒し、もう1人の男も閉じ込められた閻魔を救出してしまった。

さらに2番目に強い家来が倒され地獄との扉も閉じ、鏡の国が混乱している間に彼らは生き返ってしまった。

(恋人を魂を喰らいあいつを妃にしようと思ったが・・・仕方ない。次の機会を伺うとしよう)

鏡の国の中でこの王に敵うものはいない。

「私たちが協力してさしあげましょうか?」

「あ、あなた方は・・・!」

「面白いことを企んでいるようだね。眠気覚ましの暇つぶしに遊んであげるよ」

「これは心強いです。待っていろ。私の妃。フフフ・・・ハハハハハハ!!!」



「?」

「どうした、カカロット」

「なんか・・・いや、何でもねぇ」

老界王神の大きな水晶玉から視線を感じたが、魔人ブウとの戦いを終えたばかりの悟空はそれを気にする気力は残っていない。

「・・・やったな」

「ああ」

「ベジータも生き返ってよかった」

「もう俺の側から離れるなよ」

「おらを追っかけて死ぬくらいだからな。もう離れるなんてできねぇよ」

ベジータと悟空は額を重ねると静かに目を閉じた。

そして互いの無事を確かめ笑みを浮かべた。

これから来る新たな敵を知らぬまま。
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