鳴上悠

□scene1
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私は電車に揺られながら稲葉市へと向かっていた。
海外へ向かった両親の居ない間、叔父の家へ下宿する事になったのだ…

(まだ時間掛かるな…少し寝ておこう…)

…………………………

目を開けるとそこは薄暗い車内だった


そして私の正面には異様な雰囲気を持った老人の姿が…

「ようこそベルベットルームへ……ほう……これはまた、変わった定めをお持ちの方がいらっしゃったようだ…フフ。」

「私の名は、イゴール。…お初にお目にかかります。 ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所…本来は何かの“契約”を果たされた方のみが訪れる部屋…貴女には、近くそうした未来が待ち受けているのやも知れませんな。」

「どれ…まずは、お名前をうかがっておくと致しましょうか」

「私の名前は鳴上悠です」

「ふむ…なるほど。ではあなたの未来について、少し覗いて見ると致しましょう…」

そう言って、イゴールと名乗った老人が生み出したのはタロットカードだった。

…タロット占いでもするのか?

「常に同じカードを操っているおるはずが、まみえる結果は、そのつど違う…フフ、まさに人生のようでございますな。」

「ほう、近い未来を示すのは“塔”の正位置。どうやら大きな“災難”被られるようだ…そしてその先の未来を示しますのは“月”の正位置。“迷い”そして“謎”を示すカード…実に興味深い」

「貴女は、これから向かう地にて災いを被り、大きな”謎“を解くことを課せられるようだ。」

「近く、貴女は何らかの“契約”を果たされ、再びこちらにおいでになる事でしょう。」

彼の話を総合的に纏めると私は近いうちにこれから過ごす土地……つまり稲葉市で何らかの“謎”に巻き込まれる…そしてその”謎“を解くことを課せられ、解かなければ未来は閉ざされてしまうかもしれない……と言われた


何とも不吉な占い結果だ……


「それではまた……ごきげんよう」










はっと目を覚まして辺りを見渡す

外は田んぼなどが多くなっていてもうすぐ目的地に着くのだろうと感じさせた……


『○○線にご乗車頂き誠にありがとうございます。間もなく終点、八十稲羽〜八十稲羽〜終点でございます』

立ち上がりドアの付近に近づく

プシュー

駅の構内に降り立ち周りを見るとやはりというか、人は居らず寂れた雰囲気を感じる……無人のホームを抜けると男の人に声を掛けられた

「おーい、こっちだ。」

男性の元へ行き握手を交わす

「おう、写真よりいい女だな」

「ようこそ、稲葉市へ。お前を預かることになってる堂島遼太郎だ……ええと、お前のお袋さんの弟だ、一応挨拶して置かないとな」

そう言って叔父さんは豪快な笑顔を浮かべ1人の少女を私の前へ押し出す

「で、こっちが娘の菜々子だ…ほら菜々子挨拶しろ」

「……にちわ」

「何だ?いっちょ前に照れてんのか?」
ばしっ
「痛てっ」
菜々子ちゃんは図星を突かれた恥ずかしさからか、叔父さんのお尻を叩く……痛そうな音がした…

「まぁ、ぐだぐたしてても仕方ないからな…乗れ!帰ろう……と、その前にガソリンスタンドに寄るぞ?」

「はい、わかりました」

そうして私達を乗せた車は走り出したのだった
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