お話
□白橋
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学校に来るなり見に飛び込んでくるのはいつもの見慣れた光景。
私の幼馴染であり、恋人でもあるしーちゃんが女子達に囲まれてヘラヘラしているのだ。
しーちゃんはモテる。ただひたすらにモテる。
ただ、付き合ってることはみんな知らないので、公に止めることは出来ない。
松「まいちゃん、今日も可愛いねぇ〜」
白『ありがとぉ!さゆりちゃんも可愛いよ!』
西「なぁまいやん、またななに料理作ってや」
白『いいよ!今度家に持ってくね』
はぁ、イライラする。
深「ふふっ、不機嫌だね」
橋『別にそんなんじゃないよ』
私達が付き合ってることを唯一知っているまいまいが悪戯っぽく言ってくるから意地を張って否定してみる。
…それにしてもヘラヘラしすぎじゃない?
今日はいつも以上に酷かった。
いろんな人のお尻や胸を触ったり、やたらと近い距離で話すしーちゃんに爆発寸前だった。
ずっとモヤモヤしながら一日を過し、やっとしーちゃんを独り占めできると思ったら、二個下の後輩の飛鳥に呼ばれニコニコしながらついて行ってしまった。
それを見てもわたしはどうすることもできなくて、ただ教室に残りしーちゃんを待つだけだった。
深「行かなくていいの?」
橋『なんで?』
深『飛鳥の目見たでしょ?あれは恋するおと…あっ!ななみん!』
そんなこと知ってる。飛鳥がしーちゃんのこと好きだってことなんか前から知ってた。知ってて私は待ってたんだ。信じてたから。
でも今のしーちゃんは信じられない。
私はまいまいが言い終わる前に走って2人のことを追いかけた。
校舎裏には2人の姿があった。
2人の元に駆け寄りしーちゃんの手を掴む。
橋『ごめん飛鳥、このバカは私のだから。』
白『へっ、バカって…ちょ、奈々未!』
強引に引っ張るようにしーちゃんを連れ出し空き教室に入る。
白『奈々未、顔怖い…』
よっぽどひどい顔をしているのかそう言い顔を引き攣らせるしーちゃん。
それでもお構いなしに歩み寄り、壁際に追い詰める。
顔の横に手をつけば所謂壁ドンの形になってもう逃げられない。
白『どうしたの?』
橋『どうしたの?じゃないよ、
彼女がいるのに平気でほかの女とイチャつくバカはどこの誰?』
白『…私?』
橋『そう、あなた。しまいには後輩に告白されてモテモテじゃないですか。』
勢いで言ってみたけど、これ私が嫉妬してる感満載じゃん。
白『…嫉妬?』
ほら、言わんこっちゃない。
私の目の前でさっきまで怯えてたバカはいつの間にかニヤニヤと癪に障る顔をしている。
もういい。ここまで来たら全部言ってやる。
橋『そうだよ、だって好きだもん…!ほかの女とイチャついてるの見て気分いいわけないでしょ?
今日だけじゃない。ずっとそう、嫉妬してた。』
ここまで言えばさっきのニヤニヤした顔をニヤニヤで収まらないくらい綺麗な顔をくしゃっとして笑うしーちゃん。
白『奈々未がそこまで思ってるなんて考えてなかった。』
橋『声が笑ってる。』
白『ごめん、つい可愛くて…』
そう言って抱きついてくるしーちゃん。
耳元で『私が好きなのは奈々未だけだよ。』なんて囁かれれば、もう嫉妬とかどうでも良くなってしまう。
こんなんで許すなんて案外自分ってチョロいな、なんて思う。
橋『次はないからね。』
白『当たり前じゃん、だって好きだもん…!』
さっきの私の真似をするしーちゃんにパンチを1発食らわせて部屋から出た私達は、付き合ってることを見せびらかすように手を繋いで帰った。