8年前の節、庁舎前にて

□プロローグ
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その日は気持ちの悪いほど快晴だった。


11月11日______
私の誕生日の日。

「おい、麗。仕事だ、起きろ」

そう言いながら容赦なく何度も書類の束で私の頭を叩いてくるのは上司の降谷。徹夜で書類を整理し、やっと寝れると思えば邪魔者が現れた。そう、降谷……私の睡眠の天敵。

警察学校では、松田、伊達、萩原、緑川、私、と降谷の計6人で仲良くしていた。あいにく、そんな降谷が今となっては上司で私としてはあまり面白くないのだが。

「起きてますって、降谷……、さん。今日は私の誕生日なんですよ?もう少し、いたわってください」

「しるか。お前、今僕のことを呼び捨てにしようとしただろ」

そう睨んでくる降谷に私は笑ってごまかす。だって、降谷は降谷なんだもん。上司になってもそれは変えられない。私の所属先は降谷と同じ警察庁警備局警備企画課。長ったらしい名前を持つ、この私の所属先は通称ゼロとも呼ばれている。
危険な仕事も多くて、やめてやりたい気分だが、私と降谷以外の警察学校時代以来の顔なじみはみんな殉職してしまって今や降谷の隣にいてやれるのは私しかいない。というわけで、私の生きる理由として降谷の為、という事も含まれる。
緑川に頼まれたから__。
断る理由もないし。緑川の最後のお願いを聞くしかない。なんせ、死ぬ前にメールで送ってきてくれたものだし。


「で、今回の仕事はなんですか?危険なのは嫌ですよ?」

「ほぅ、仕事の指定をするなんて、いつの間にやら偉くなったんだな、神立 麗。残念だったな、今回の仕事は麻薬の取引現場を抑える。運が悪ければ銃撃戦だ」

「げ……」

意地悪く、そうニヤリとする上司を見て私は鳥肌が立った。命は大切に、と小さい頃から教えられてきたのにこの仕事は生命力がすり減るような仕事ばかり。
運が悪ければって、大体 銃撃戦になる事の方が、多い気がする。気のせいかな。今日も私は自分自身の命を守ることに専念しよう、と心に誓った。
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